本科研の最終年度に当たる28年度には、以下に掲げるいくつかのテーマから春日信仰にアプローチした。絵画では、徳川美術館所蔵の春日南円堂曼荼羅・鹿島立神影図、静嘉堂文庫美術館所蔵の春日本迹曼荼羅・春日鹿曼荼羅等、根津美術館所蔵の春日宮曼荼羅・春日補陀落山曼荼羅等を現地調査したほか、アメリカ合衆国に4名を派遣し、ブルックリン美術館・メトロポリタン美術館・アジアソサエティ・クリーブランド美術館において春日信仰等に関わる所蔵絵画を調査し、あわせて地蔵菩薩立像(彫刻)の調査も実施した。書跡では、京都大学附属図書館が所蔵する江戸時代の春日若宮祭に関わる資料を調査した。考古では、前年度からの継続で春日東西塔跡出土品を整理し、報告書に向けた準備を進めた。以上の調査成果の一部は、特別陳列「おん祭と春日信仰の美術―特集 奈良奉行所のかかわり―」に反映させた。 また、これまで3年間の調査・研究の蓄積を踏まえ、その中から新知見の検出、未発掘資料の掘り起こしといった点で成果のあったものを取り上げ、報告書として29年3月に刊行した。その目次は以下の通りである。「アメリカ・ロサンゼルス州立美術館所蔵の日本彫刻」、「京都大学附属図書館所蔵「奈良与力橋本家律令雑記」に含まれる春日若宮おん祭関連史料の調査」、「在外春日曼荼羅調査報告」、「春日東西塔院跡出土の軒瓦」、「春日大社(奈良)と香取神宮(千葉)の海獣葡萄鏡の調査」。春日信仰あるいは広く神祇信仰について、さまざまな側面から新史料の提示、悉皆的調査成果の公表を果たすことができた。
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