研究課題
本研究では、アニメーションによる日本手話の形態素・語彙辞書の構築、形態素記述法と記述支援システムの研究、及び工学応用として記述からのアニメーション生成による手話教育・コミュニケーション支援を目的としている。本研究は、「課題1:形態素辞書関連」、「課題2:記述法関連」、「課題3:手話工学的研究」の3 種類の課題と、これらの課題解決に必要となる語彙やコーパス収集・蓄積方法の検討、言語学的な解析や記述を支援するシステムの開発を行う「共通課題」とが有機的に関連しながら研究を遂行することになる。本研究では、情報工学的視点から新たな形式の言語資料、形態素分析や手話文法などの解明への新たなツールを提供することを目標としている。本年度は、年度当初の計画に基づいて下記の課題の実施を行った。(1) 鹿児島市維新150年イベントを題材として、110案内文の収集作業と手話訳の作成するとともに、これまでの未登録単語の手話形確定作業を行った。未登録単語として、約300語彙を含んでいる。(2) モーションキャプチャによる3 次元語彙動作収録:言語資料を作成するため、高品位な手話のモーションデータの取得を東映ツークン研究所へ委託作業として発注を行う。ただ、データ収集に関する監督作業はすべて研究代表者の長嶋が行う。実際の撮影は、(1)で収集した文と単語である。(3) 形態素解析支援システムの構築では、昨年度の形態素構造を解析そして記述支援ツールの設計に基づき、システムを試作して3次元動作形態素辞書の作成を行った。(4) 記述法では、昨年度採録された論文のNVSG 要素モデルを基に、既存保有動作データの記述を継続して行った。(5) 手話アニメーション描画方式では、表情生成も考慮した独自の3Dアニメーション描画方法の検討を行い、bvhファイルからの動作合成エディタの設計を行った。bvhビュワーの開発も終わった。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究の柱となる3課題の内、「課題1:形態素辞書関連」の成果は2016年1月の電子情報通信学会論文誌Dに論文として採録されている。また、「課題2:記述法関連」の成果は2015年1月の電子情報通信学会論文誌Aに論文として採録されている。さらに、「課題3:手話工学的研究」の成果の一部としてNVSG要素モデルからの3次元動作の合成方法は2016年5月の通信学会の研究会に、7月の18th International Conference on Human-Computer Interactionに手話工学分野での配布希望の出ている記述支援ツールの採択も決まっている。さらに、「共通課題」である記述ツール並びにビュワーの開発は終了している。そして、3次元形態素辞書データベースでは語彙数の追加検討を開始している。以上のことより、3課題はほぼ終了し、新たな合成方法の検討を最終年度に開始でする。
最終年度に当たるため、全成果のまとめを行うと共に、新たに発生した問題点の整理を行い、次の研究目標を作成することで新たな科研申請の準備を行う。また、問題点のうち検討できるものから逐次今年度から研究を開始する。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (12件)
電子情報通信学会論文誌 D
巻: J99-D ページ: 76-89
10.14923/transinfj.2015HAP0027
IFIP International Federation for Information Processing 2015
巻: LNCS 9299 ページ: 502-505
10.1007/978-3-319-22723-8_48