研究課題/領域番号 |
26244040
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
吉村 武彦 明治大学, 文学部, 教授 (50011367)
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研究分担者 |
加藤 友康 明治大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00114439)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 日本史 / 考古学 / 墨書土器 / 古代史 / データベース / 文字史料 |
研究実績の概要 |
研究の基礎となる墨書土器に関する研究文献は、大学図書館・大学博物館図書室等の研究文献・報告書等を調査して作成し、現在2015年3月版(2047点)を明治大学日本古代学研究所ホームページで公開している。これ以降さらに増えて2057点になっているが、研究の基礎として継続して集成し、順次公開していく予定である。 墨書土器データベースは、画像付き詳細データベースは長野県6227件を公開した。また、山形県6391件、茨城県(補遺)762件、平城京3319件、広島県247件のデータが完成している。早期に公開できるよう最終調整を行い、公開していく。このほか岩手県3272件、千葉県(続)7626件、愛知県3590件がテキストデータのみ完成している。画像を含めて、早期に完成させていきたい。ただし、件数が想定以上に多く、入力作業にはかなり時間がかかっている。なお、墨書土器データ集成のため、茨城・千葉・愛知・岩手・広島に出張し、現地の埋蔵文化財センターの協力を得て、データベースを構築している。以上の結果、完成したデータによって、平城宮・京と東日本・西日本の比較研究が可能となったばかりか、長野県など山国との比較研究の対象が増え、汎日本的な墨書土器研究が可能となる条件が整備されつつある。 現在、三重県と鹿児島県(補遺)が作業中である。データべース構築には、文献の悉皆調査が必要となってきており、和歌山県など従来の作業の再検討も必要となっている。 地域研究としては。主に千葉県市川市を対象に、市川市史編纂と連携しているが、広島・岡山・兵庫・大阪・三重の地域研究者とデータベース構築の打合せ、宮崎・福岡では現地調査を行った。東アジア地域との関係では、金在弘韓国・国民大学教授の支援を得て、百済国関係の出土文字史料調査を実施するとともに、賀雲コウ中国・南京大学教授の助言を得て中国南朝の文字調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
墨書土器およびその研究の文献調査は、『文化財発掘出土情報』・『史学雑誌』文献目録のほか、考古部門をもち報告書の寄贈が多い大学博物館図書室などで情報を入手して、目録を作成している。これまでは少し公開に時間がかかったが、2015年3月版を公開することができた。今後は、インターネット上で検索できるシステムを利用して、公開できるようにしていきたい。 これまでのデータベース構築は、奈良文化財研究所の墨書土器に関係する報告書抄録目録を利用していたが、必ずしも十分ではないことが判明した。そのため、府県別に悉皆調査を実施しなければならないが、明治大学内だけではその作業は難しく、府県出張が必要になってきた。この業務が想定以上に時間がかかるが、府県の研究者の協力を得て、対象府県数をしぼりながら実施してきた。その成果として、以前より墨書土器の情報が集まりデータベースに反映させることが出来ている。今後も粘り強くやっていきたい。 対外関係の研究では、日本古代の墨書土器を含む出土遺物は、中国・南朝と朝鮮・百済の影響が強いことが明らかになりつつある。南朝の出土文字史料と百済の出土文字史料に関しては、当該地域研究者の協力を得て、現地の中国語・韓国語論文を翻訳し、日本との比較研究がスムーズに行えるようにする準備が進行中である。次年度には、早期に発表する計画である。 なお、墨書土器関係の現地調査と打合せにおいて、ホームページで公開している墨書土器データベースの存在が、かなり広範囲に知られてきていることが判明している。また、現地研究者がこの墨書土器データベースを利用して、釈読の参考にしている状況もわかってきた。こうしたデータベースの利用実態からみても、本基盤研究が順調に推移して、学界で活用されていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の研究計画にそって具体的に進行させることが第一に重要である。地道な営みであるが、この基礎的作業を積み重ねていくしかない。東日本大震災の影響で、東北地方の研究が遅れているが、福島・宮城を除いて、現地研究者との協力が可能となりつつある。 本研究の目的を遂行するには、東京だけでは不可能であり、現地研究者と連携しながら、しかも現地の埋蔵文化財センターなどで報告書等を複写して作業していく必要がある。メールだけの連絡では意思疎通が十分ではなく、現地で直接打ち合わせないと進まない場合がある。計画を遂行するため、墨書土器データベース構築の作業担当者の分担を決め、地域別の作成計画を確認する。従来どおり、代表者が墨書土器文献目録を作成し、全国の墨書土器研究の研究動向を掌握する。 研究計画としては、①近畿・中部・東北・中国地区のデータベース未完成地域の墨書土器データの集成と研究、②既存のデータベースの補訂作業、③墨書土器情報のデータ入力と公開、およびその機能・意義の比較研究、④中国・韓国における墨書土器の集成、およびその比較研究、という4段階がある。2年目の2015年度は、①・②の墨書土器資料の集成と補訂作業が中心となり、並行して③の作業を進めていく。そして、点数が少ないが、④の比較に留意する。 今後も、研究総括者の吉村武彦と研究分担者の加藤友康が日常的な研究と運営に責任をもち、連携研究者の川尻秋生・市大樹・柴田博子・荒木志伸と特別研究協力者の山路直充氏らを、墨書土器の出土数が多い重点地区担当者とし、現地の協力研究者を決定して、具体的作業を進めていきたい。このような人員配置のもと、日本全国の墨書土器データベース構築のために努力したい。
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備考 |
公開しているデータベースの「科研5」が、本基盤研究の成果である。
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