研究課題/領域番号 |
26244041
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
馬場 基 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (70332195)
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研究分担者 |
井上 聡 東京大学, 史料編纂所, 助教 (20302656)
耒代 誠仁 桜美林大学, 総合科学系, 講師 (00401456)
渡辺 晃宏 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 副所長 (30212319)
高田 智和 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (90415612)
木村 直樹 長崎大学, 多文化社会学部, 教授 (40323662)
桑田 訓也 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (50568764)
高田 祐一 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, 研究員 (50708576)
吉川 聡 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 文化遺産部, 室長 (60321626)
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研究期間 (年度) |
2014-06-27 – 2018-03-31
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キーワード | 日本史 / 史料学 / 情報学 / 書道史 / 文字学 / 漢字文化 |
研究実績の概要 |
本研究は、歴史的な文字に関する様々な経験知について、情報学の技術・手法も導入しつつ、研究資源化を進め、歴史・文字研究の深化と発展を目指す。2016年度は、気付きメモ(気づきを任意に記述)約2300件、観察記録シート(文字の観察をフォーマットで整理)約9300文字件を蓄積した。この成果の蓄積をもとに、関係者による研究会で研究成果の共有や方向の検討をおこなった。 観察記録シートの蓄積を用いた木簡文字の研究としては、特有の異体字・崩し方が、特有の地域に偏る現象を見いだし(今回は愛知県島嶼部での状況が中心)、文字文化の展開状況を数値的に把握する端緒をえることができた。著名な木簡群なのであるが、今回見いだした特徴は、これまでは見落とされてきたものであり、観察記録シートを丹念に蓄積する中での大きな成果と言うことができるであろう。さらに、近世文書の文字も観察記録シートによるデータ作成を行ったことは、特筆される成果である。昨年度までは主として古代、一部中世の文字を対象に作業を進め、またその有効性を検証してきていた。今年度は近世文書に関するデータ作成・収取とその分析を行い(住友家文書)、現在の分析の方向の有効性を確認することができた。 気付きメモについては、情報学の技術を用いての分析を行い、文字観察者が注目している視点や、そこに与えられている表現の特徴の抽出作業を行った。 このほか、研究成果の一部を、『漢字字体史研究 二』(石塚晴通監修、高田智和・馬場基・横山詔一編。勉誠出版)に収録して出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
観察記録シート等の蓄積を確実に進めて、その有効性を確認するとともに、蓄積したデータを元にした分析研究によって新たな知見をえることにも成功しつつある。その有効性は、時代的には古代から近世までカバーできることも確実となった。また本研究で得られた成果を書籍として公刊・公表できたことも大きな成果と言える。 情報学からの分析も、気付きメモの解析等を通じて成果を挙げつつある。ただし、字形の数値的把握を観察記録シートと比較する作業について、遅延傾向にある。 以上を総合して概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
観察記録シートと気付きメモの蓄積を進める。木簡への作業では、これまで国別に荷札を選択して集中的に作業を行っており、これらで出た成果を相対化するために、従来作業をしていなかった地域や時期・内容の文字に対して作業を行う。また中近世文書については、比較的閉じた世界で書かれた文字を中心に、文字の特徴の在り方が、その世界特有なのか個人に属するのか等の観点から情報収集を行うことを企画している。 その上で、この二つのデータの総合的分析を目指す。また本研究の成果を、図版による解説を中心とした冊子で刊行し、国民に対し還元する予定をしている。また、共同研究の加速によって、文字文化研究が文化研究全般と結びつく様相が見えてきており、今後本研究の成果を生かし、発展させて新たな研究に展開していくための方向性を模索する。
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