研究課題/領域番号 |
26244042
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研究機関 | 奈良大学 |
研究代表者 |
角谷 常子 奈良大学, 文学部, 教授 (00280032)
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研究分担者 |
伊藤 敏雄 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00184672)
市 大樹 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (00343004)
佐川 英治 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (00343286)
渡辺 晃宏 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 副部長 (30212319)
李 成市 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30242374)
寺崎 保広 奈良大学, 文学部, 教授 (70163912)
藤田 高夫 関西大学, 文学部, 教授 (90298836)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 碑 / 石刻 / 社会 |
研究実績の概要 |
今年度は全体研究会3回、国外現地調査、国内現地調査を各1回実施した。全体研究会では、メンバーによる研究発表と招待研究者による研究報告を行った。メンバーによる発表は、夏に実見する予定の石刻を中心に、その歴史的、社会的意義について、また当該時代における立碑の状況とその意味についての報告であった。招待研究者による報告は、中国唐代の廟碑とラテン語碑文から見たローマ社会についてであった。いずれも誰が何を目的として石を立てるのかといった事実関係と、その背後の意義について議論した。時代や地域で具体的な事情は異なるものの、共通した意味を見出すことができた反面、そうした状況が起こらない社会はどういう社会かという「石がない」ことの意味へのアプローチの仕方の難しさが改めて浮き彫りになった。夏は中国(洛陽、成都)で石刻資料の調査を行った。北京郊外の義慈恵石柱、洛陽市博物館、定鼎門の基壇遺構、洛陽師範学院石刻史料館、含嘉倉、洛陽市文物保管所、偃師商城博物館の石刻館、漢魏洛陽城、古墓博物館、北魏孝文帝陵、河南博物院、四川省では四川博物院、金沙遺跡博物館などを見学し、さまざまな石刻資料を実見できた。大半は博物館の所蔵のものであるが、それでも側面・背面など仔細に見ることができ、拓本では理解できないことがわかった。また、石の発見場所が確認できたものもあり、石の内容と立地の関係を知る上で貴重であった。また3月には熊本・天草方面で、浄水碑など石刻資料を調査し、さらに鞠智城、県立装飾古墳館などを見学した。全体として、当たり前のことかもしれないが、石はやはりよく残る、ということを実感した。「残すこと」が何を意味するのか、今後の課題が一つ明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
石刻資料が豊富な韓国・中国における共通点と相違点が明確に認識されつつあること、日本の古代に残る石刻資料にも渡来人の影響のあるものとないものがあること、日本でも古代と中世・近世とでは石刻のあり方が異なることが認識されてきたこと、さらに現地調査を重ねることで以上のようなそうした認識が実感できてきたこと、などからメンバーの中で、東アジアの石刻事情に対する理解は順調に深まっていると考える。また、日本古代に石刻が少ないことの理由について、諸外国における立石の契機と比較参照することによって逆に浮き彫りになるという、当初の見通しが実現可能ではないかとの認識も深まりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
研究方法は従来の計画通りに進める。即ち各自の担当地域や時代において、文字文化を通した社会関係・人的結合関係を追及する。今年度内に現時点での成果をまとめ、それをたたき台に、議論・批判を通して完成度を高め、ギリシャ・ローマの石刻研究者に投げかけ批判・意見を得たい。それによって新たな視点・視覚を得て我々の研究に活かしてゆく。何を契機に立石されるか、その背後にどのような集団があるか、どのような目的か、政治的・社会的背景はどうか、といったことを明らかにし、東アジア各地域の共通性と相違点を明らかにしその意義を問うことが課題であるため、できるだけ多様な事例を検討すべく、多くの地域、時代の研究成果を吸収できるよう、現地調査や研究会活動を活発に行いたい。
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