研究課題/領域番号 |
26244042
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研究機関 | 奈良大学 |
研究代表者 |
角谷 常子 奈良大学, 文学部, 教授 (00280032)
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研究分担者 |
伊藤 敏雄 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (00184672)
市 大樹 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (00343004)
佐川 英治 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (00343286)
渡辺 晃宏 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 副部長 (30212319)
李 成市 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (30242374)
寺崎 保広 奈良大学, 文学部, 教授 (70163912)
藤田 高夫 関西大学, 文学部, 教授 (90298836)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 石刻 / 社会関係 / 人間関係 |
研究実績の概要 |
28年度は、ロンドンでのシンポジウム開催が活動の中心となった。これはこれまでの研究の中間発表の意味あいのあるもので、これによって非アジア圏の研究者からの批判を得、我々の研究を相対化することと新たな視覚を得ることを目的とした。シンポジウムに向けて、予備発表と討論を行い議論が深まるよう、レジュメの作成方法も検討した。シンポジウムは8月30日から9月5日までの日程で、ロンドン大学にて「Law and Writing Habits in the Ancient World」と題して開催した。研究班からは6名が発表、3名がコメントを行った。また6名の外国人研究者による発表とコメントも行われた。参加者は30名弱であった。外国人研究者の発表内容はギリシャの法と石刻に関する研究であったが、我々アジアにおける研究と多くの共通した問題意識があることが確認できた。その一方ギリシャにおける石刻の豊かさの原因が、アジアのそれと質的に異なるところにあることもまた理解された。外国の研究者の反応は予想外に好意的で、今後英語圏への学術的情報発信の必要性を感じた。ロンドンでは近年シティーで出土した木簡を、MOLA(Museum lf London Archaeology)において実見するという得難い機会に恵まれた。ローマ時代の木簡についてはヴィンドランダに移動して郡の駐屯地の遺跡とともに実見し、中国や日本・韓国の木簡との共通点と相違点を検討した。国内での活動としては、専門家を招いての研究会活動と国内の調査旅行を行った。2017年3月に久米官衙遺跡・来住廃寺、伊予湯岡碑の故地、大山祇神社、中世木簡の出土地である草戸千軒遺跡、などを調査した。これ以外の活動としては、石刻の少ない日本古代に対して近世にはかなり増えることの意味とその実態を知るべく、江戸時代後半期における立石の状況を、専門家を招いて議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、中国と韓国には石刻が豊富だが、日本古代には非常に少ないことから、石刻資料が社会の比較に適当かという問題もあった。しかし、特にシンポジウムを通して、石刻を必要とする社会としない社会の違いを、従来とは異なる視点でとらえることが可能であるとの認識が共有され、日本古代史研究にも大いに刺激となった。こうした共通認識の獲得は最終とりまとめにも必ずや良い結果をもたらすものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
従来通り、可能な限り異分野、異地域の研究成果を吸収することと、現地を見ることを継続して行ってゆく。ただ、あと2年を余すのみとなったので、今年度は最終年度における成果のとりまとめに向けて、各自が本格的に研究に取り組む年と位置付ける。同時に昨年行ったロンドンでのシンポジウムの成果公表の方法についてめどをつけるべく、ロンドンのBICSへの投稿申請をする予定である。また、現地調査はベトナムを予定している。ベトナムでは最近、文献史料との対照が可能な貴重な石碑が発見されて注目を集めているし、また古くから中国の支配を受けるなど大国の影響下にあったことから、興味深い遺物がある。それらを実見・調査したい。
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