研究課題/領域番号 |
26244048
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研究機関 | 札幌学院大学 |
研究代表者 |
臼杵 勲 札幌学院大学, 人文学部, 教授 (80211770)
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研究分担者 |
高瀬 克範 北海道大学, 文学研究科, 准教授 (00347254)
坂本 稔 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (60270401)
石田 肇 琉球大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70145225)
小畑 弘己 熊本大学, 文学部, 教授 (80274679)
笹田 朋孝 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (90508764)
木山 克彦 東海大学, 公私立大学の部局等, 講師 (20507248)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 考古学 / 遊牧国家 / 匈奴 / 生産 |
研究実績の概要 |
本研究では、7月に研究参加者による、研究方針の確認と実施計画の策定を行い、それに基づき、9月にモンゴルでの現地調査、2月に整理作業と既存資料の調査を実施した。研究の柱は匈奴国家の生産体制の考古学的解明、文献史料との対比、人骨・獣骨・種子等の資料からの生業の検討と生活史復元である。また、年代測定を活用した編年の構築をめざす。 そのためモンゴル国ヘンティー県ホスティン・ボラク遺跡群において、鉄生産・窯業生産・墓地遺跡の測量・発掘調査を実施した。本遺跡群では、匈奴時代の製鉄工房・窯址群が確認され、近辺には同時代の城址・墳墓も存在する。本年は窯址の分布の確認と地形測量、窯址の試掘、炭化物サンプルの採取、製鉄工房部の調査、同遺跡群を見下ろす位置にある匈奴時代墳墓群の測量・発掘調査(墳墓1基を発掘)、周辺遺跡の一般調査を行った。また、発掘・試掘地点で土壌サンプルを採取し種子等の検出を行った。その後、出土資料の整理(墳墓出土人骨等の3D記録化も含む)と併行し、ノイン・ウラ遺跡、エギン・ゴル遺跡等の出土資料の観察・レプリカ採取も実施した。これは、編年の構築と生業の解明を目的とした作業である。 年代測定と出土資料・一般調査採取資料の検討により、各遺構・地点の同時性が確認でき、それらの関連性についての見通しが得られた。また、土器・瓦の生産地と消費地の関係についても資料が得られた。さらに土器のレプリカサンプルからキビの種子を確認し、農業生産に関する具体的資料が得られた。 さらに、匈奴の生産・定住についての史料の集成作業を行い、考古資料と比較するためのデータを整えた。また、研究の基礎資料とするため、各国の現地調査が活発化する中で増加した考古学・人類学・歴史学に関する文献・論文等のデータベースの作成を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
5年間の研究の基本方針を確認し、研究の目的、方向性を明確化し、それらを研究参加者で共有することができた。また、現地調査・整理、資料調査、年代測定学・人類学・文献史学等との学際的研究の具体的な進め方についても、おおむね定めることができた。 現地調査においては、窯址群については次年度の発掘調査地点の絞り込みができ、具体的な計画が可能になった。また、自然遺物等の資料採取も順調に進み、検討可能な資料が得られた。墳墓調査では、その形態、年代、一括遺物、人骨等の良好な資料が得られ、さらに周辺遺跡との同時性が確認でき、調査地域における複合的な検討が可能になった。なお、人骨等の人類学的な資料化・検討については、モンゴル国立大学の担当者の都合により本格的には開始できなかったが、次年度以降の計画については調整が進んだ。 整理作業・資料調査においては、これまでモンゴルでは不十分であった図面・写真等の精細な資料化に加え、人工遺物・人骨に関して3D記録化を行い、日本においてもそれらの詳細な検討を可能にした。また、遺物編年構築作業に関する資料も蓄積できた。 匈奴関連文献史料の集成、モンゴル・ロシア・中国・日本・韓国・欧米諸国にまたがる関連文献等のデータベース作成も進行しており、研究の基盤形成にとりかかることができた。
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今後の研究の推進方策 |
匈奴国家の生産基盤、都市・定着集落形成のメカニズムの解明のため、匈奴の各種生産の中心地の一つと考えられるホスティン・ボラク遺跡群において生産遺跡の現地調査を継続し、金属生産工房、窯業址の発掘調査を通じて生産の実態を明らかにする。また、工房の成立時期や継続期間、生産品の使用や流通の様相からを、城址・集落・墳墓等の周辺遺跡との関連性を明らかにする。また、必要な理化学的分析を順次進めていく。 中国・ロシア・モンゴルにおける農業関連出土資料の調査を行い、農具遺跡における出土状況の検討、土壌サンプル・土器等の圧痕資料の分析を通して、匈奴の農業生産の実態を明らかにする。また、人骨・獣骨等の資料化と分析を進め、病理・食性・育種等の生活史復元を進める。同時に、文献史料から読み取れる匈奴の生産や都市・定着集落の様相と、考古資料を比較検討する。この中には、木簡・印章等の出土文字資料も含めて検討する。 現地調査・各種分析・史料検討を総合し、匈奴国家における各種生産・定着集落の様相と意義を明らかにする。 文献等を通じて、ロシア、中国、モンゴルにおける匈奴時代遺跡(墳墓・集落・都市生産遺跡等、文献)のデータベース構築を進める。さらに、遺物による編年の構築と年代測定による暦年代の確定作業を進めす。同時に、匈奴・鮮卑等の遊牧集団に関して、文献史料と漢簡等の出土文字資料のデータベースの構築を進める。以上の作業で、初期遊牧国家に関する研究基盤の整備を進める。 研究成果についてはSNSによる速報、国際学会等での発表、論文等などにより、順次公開を進める。発掘調査成果については、終了後に調査報告書を作成し、詳細を公開する。
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