研究課題/領域番号 |
26245006
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
土田 和博 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (60163820)
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研究分担者 |
若林 亜理砂 駒澤大学, その他の研究科, 教授 (00298069)
長谷河 亜希子 弘前大学, 人文学部, 准教授 (00431429)
越知 保見 明治大学, 法務研究科, 教授 (00554049)
洪 淳康 金城学院大学, 生活環境学部, 准教授 (10554462)
岡田 外司博 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (30213945)
林 秀弥 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30364037)
青柳 由香 横浜国立大学, その他の研究科, 准教授 (60548155)
清水 章雄 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (70142784)
宮井 雅明 立命館大学, 法学部, 教授 (70273159)
東條 吉純 立教大学, 法学部, 教授 (70277739)
須網 隆夫 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (80262418)
瀬領 真悟 同志社大学, 法学部, 教授 (90192624)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 独占禁止法 / 競争法 / 産業政策 / 開発政策 / 適用除外 / 国有企業 / 不公正な取引方法 / 優越的地位濫用 |
研究実績の概要 |
2015年度は、第1に独占禁止法上の不公正な取引方法の総論的・理論的研究を行った。2015年5月に研究会を開催し、舟田正之立教大学名誉教授によって、競争秩序における「取引の自由」、業績競争、力の濫用、公正競争阻害性の考え方等について検討が行われるとともに、土田が舟田著『不公正な取引方法』に関連して、competition/competitorの2分論、舟田説における不公正な取引方法の位置づけ、「制度保護」と「個人保護」あるいは独占禁止法と民法ないし民事実体法の関係についてコメントを行った。またEUやイギリスにおいて、近年「相対的市場力」の規制に新しい進展がみられるとされることから、2016年1月に、森平明彦教授(高千穂大学)を招聘してこれに関する研究会を開催した。 第2に、中国・反不正当競争法における不公正な取引方法、とりわけ優越的地位濫用規制の導入可能性等について2015年6月に現地調査を行った(時・中国政法大学教授、王・前社会科学院法学研究所教授)。同時に中国は、近年、国家発展改革委員会を中心に、国内外の価格カルテルを規制し始めていることから、自動車部品を生産する日本企業のカルテル事件についても同委員会、法律事務所、大学教授等において聴き取り調査を行った。 第3に、アジアの競争法後発国が競争法を制定してから相当の年数が経過しているものもあるところから、これらの法域において競争法が制定された当時の背景・理由と近年の進展・展開を調査するとともに、最近の特徴的な動向を台湾(2015年12月)と韓国(2016年1月)について調査した。台湾においては競争法の現代化とでも呼ぶべき現象が、韓国では国際的事件における外国企業への刑事処罰化という新しい動きが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本共同研究の進捗状況を、4年継続する予定の中間時点(2年が終了した時点)で判断すれば、以下のとおりである。 まずフェアコノミー(公正経済)に直接に関係する独占禁止法上の不公正な取引方法の規制に関する総論的・理論的研究が相当に進展した。特に2015年度に舟田立教大学名誉教授、土田による報告を柱とする研究会を実施して、「取引の自由」論の射程、業績競争、力の濫用の概念、「制度保護」と「個人保護」の関係、公正競争阻害性の法解釈等について理解を深めることができた。不公正な取引方法の各論についても、特に取引上の優越的地位濫用に関して、2014年度に岡田早稲田大学教授等が本共同研究での検討を踏まえて日本経済法学会で報告するなど成果を挙げている。2015年度には森平高千穂大学教授を招いて、優越的地位濫用と関係の深いEUや英国の相対的市場力規制の新しい進展について研究会を開催した。 研究の国際・比較法学的側面については、以下のとおりである。まず中国については、反不正当競争法における優越的地位濫用規制の導入可能性につき2015年6月に現地調査を行った。その後の情報によれば、反不正当競争法の改正案が準備されている段階に入ったとされており、この問題に一層注目していくこととする。また1991年に日本の独禁法の影響を受けて制定された台湾・公平交易法は、近年「現代化」の様相をみせており、その1つの現われが不公正な取引方法の再編成である。他人の商標を盗用するような行為の比重はやや低下するとともに、より重要な再販売価格維持行為等を共同行為として規制する世界的な潮流に倣うものとなっている。さらに韓国についても、不公正な取引方法全般の積極的な運用状況(刑事処罰さえ行われる)を確認した上、2014年度に紛争の早期、実質的解決を図るものとして公正取引調停院による調停手続を実地調査した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、①「独占禁止法の適用除外、正当化事由」を具体的課題として共同研究を継続しつつ、②最終年度である来年度に予定している研究成果(著書)の刊行に向けて、その準備のための研究会を行う。 ①に関連して、本共同研究の1つの焦点である開発途上国の競争法においては、様々な適用除外規定があり、正当化事由も少なくない。特に国有企業に対しては、当該国の競争法が法律上または事実上、適用除外される場合が多い。したがって、5月に前UNCTAD競争政策・消費者政策担当局長であり、現在、マレーシア・Perdana大学教授のH. Qaqaya氏を招聘して東京と京都で研究会を行う予定である。途上国の競争法が国有企業に対してどの程度適用されているかをより具体的に探るため、国有企業が多いとされるベトナムやインドネシアなども調査することを企画したい。 中国と韓国については、研究協力者である前中国社会科学院法学研究所・現湖南大学の王暁嘩教授および権五乗ソウル大学名誉教授を10月に招いて、前回の調査当時明らかでなかった中国・反不正等競争防止法の改正案(取引上の優越的地位濫用)の動向、韓国・公正取引法の不公正な取引方法規制の展開について聴取り調査を行うこととする。さらに正当化事由については、日本でもEUなどでも特に問題となるのは、健康、安全、環境など社会公共的利益ないし非経済的利益による正当化の是非である。邦文の参考文献や欧州委員会の水平的協定ガイドライン等が一定の参考資料を提供しており、これらを検討することとしたい。 課題②については、今年6月以降、毎月3人ずつの報告者を立てて研究会を行い、そこで報告と質疑を行うことによって、来年度刊行する予定の著書の準備作業としたい。その際、研究代表者、分担者、協力者では対応が困難な法域や課題については、メンバー以外の研究者も積極的に招聘して研究会を実施することとする。
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