研究課題/領域番号 |
26245018
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
岩下 明裕 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 教授 (20243876)
|
研究分担者 |
古川 浩司 中京大学, 法学部, 教授 (00340183)
田畑 伸一郎 北海道大学, スラブ・ユーラシア研究センター, 教授 (10183071)
八谷 まち子 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (40304711)
田村 慶子 北九州市立大学, 法学部, 教授 (90197575)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | ボーダースタディーズ / 国境地域 / 政治地理学 / 地政学 |
研究実績の概要 |
本研究は、主権国家間の関係やパワーに基づいた従来からの国際関係論の分析手法を乗り越え、これまで捨象されてきた国家間の空間的近接性、国境・境界の問題という国際関係を規定する本質的なファクターに焦点を当てることにより、国際関係論、政治地理学を軸にしつつも経済学、歴史学、環境学などを専門とする研究者との協働を通じて、境界地域のミクロな「生活圏」を足場とした「下からの」政治地理学、「新しい地政学」を誕生させることを目的としている。 理論的な分野では、セミナーを東京で2回主催し、北米の知見を集約するとともに(連携研究者:川久保文紀が担当)、米国ポートランドでAssociation for Borderlands Studiesの年次集会(4月)で本研究テーマを主題の一つとして組織し(研究代表者はプログラムコーディネーター)、福岡でも政治地理と国際関係をテ-マとする国際会議(11月)を開催した。 これらの進捗 は、前年度の成果をさらに発展させるものであり、実態研究、特に「生活圏」や「下からの」アプローチに関しては、境界地域研究ネットワークJAPAN(JIBSN)との共催で、根室市でセミナーを開催し(2月)、稚内、対馬、与那国など境界自治体の隣接地域との交流実態と課題を検証した。 これらの成果はweb上で日英の両言語ですでに公開されているが、ボーダースタディーズについての本邦初のオリジナルな成果として刊行された『入門国境学:領土、主権、イデオロギー』(中公新書)のなかで国際関係へのこの新しいアプローチを展開している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
下記のように、国際学会の大会を主催し、これまでの成果を英語、日本でそれぞれ書籍として刊行し、本研究課題の画期的な成果を得た。 ・国内会議・セミナーの組織:ボーダースタディーズ北米研究部会の開催(中央大学:川久保文紀担当)、JIBSN(境界地域研究ネットワークJAPAN)との共催・根室セミナー(自治体、研究者、メディアなど60名弱が参加:古川浩司担当)詳細はJIBSNのHP参照:http://src-hokudai-ac.jp/jibsn/index.html ・国際会議(国内で開催)の組織:「領土という『呪い』を考える」(11月:九州大学)、(山崎孝史、川久保文紀らとともに政治地理学の第1人者ジョン・アグニューらを招請) 成果は雑誌『境界研究』に刊行:http://src-.slav.hokudai.ac.jp/publictn/JapanBorderReview/no6/index.html ・国際会議(海外で開催)プログラムの組織:Association for Borderlands Studies年次集会Border Studies and the New World (Dis)order: Relating Theories and Practicesの全体組織及び特別セッション “A Walled World?” Borders, Walls, and Resistanceの組織(Michael Dear/ University of California, Berkeley, Mikhail Alexseev/ San Diego State University, James Scott/ University of Eastern Finland, Polly Pallister-Wilkins/ University of Amsterdamを招請)。科研のメンバーがそれぞれ参加、報告。 ・成果の公開:Japan’s Border Issues: Pitfalls and Prospects (Routledge)、『入門国境学:領土、主権、イデオロギー』(中公新書)の刊行。
|
今後の研究の推進方策 |
この成果をもとに今後も本研究を拡大し、深化させる。現時点ではまったく問題点はないが、国内外の多くのボーダースタディーズの研究者をより本研究に関与させ、組織化していくプロセスのなかで、事例研究の集積とそれにもとづいた更なる理論的成果の発信がより活発化しよう。とくに以下のことを推進したい。 ・全国における境界研究の地域部会の組織と連携 東京で始まった北米研究部会、名古屋に拠点を置く日本の境界研究部会の定期開催に加え、九州大学アジア太平洋未来研究センターのボーダースタディーズモジュール(研究代表者はクロスアポイントメントでモジュール代表を務める)において、本研究の分担者・連携研究者とともにAssociation for Borderlands Studiesの日本部会を立ち上げ、その事務局と活動の運営を開始する(平成28年4月のABSリノ大会で理事会にて正式承認)。 ・この日本部会などとの共催により、平成28年12月には国際関係とボーダースタディーズを軸とした国際会議を北九州で開催する予定である。 ・JIBSNとの協働により、「生活圏」「下からの」地政学を創出するための、実態研究、実務連携を進める。平成28年度のセミナーは東京及び小笠原で開催予定である(平成28年11月頃)。 ・ボーダースタディーズの国際関係への応用としてボーダーツーリズムの企画に加わる(6月八重山・台湾:9月中国ロシア国境など)。 ・『入門国境学:領土、主権、イデオロギー』(中公新書、岩下明裕)の刊行を踏まえ(平成28年3月)、ボーダースタディーズ理論の国際関係への応用として、ボーダーツーリズムによる地域や政策研究コニュニティに対する貢献を目指す。
|