研究課題/領域番号 |
26245024
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡田 章 京都大学, 経済研究所, 教授 (90152298)
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研究分担者 |
関口 格 京都大学, 経済研究所, 教授 (20314461)
蓼沼 宏一 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (50227112)
宇井 貴志 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (60312815)
梶井 厚志 京都大学, 経済研究所, 教授 (80282325)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ミクロ経済理論 / ゲーム理論 / 協力メカニズム / 交渉理論 / 繰り返しゲーム |
研究実績の概要 |
本研究課題では、ゲーム理論の先端的な研究手法を用いて、経済社会における多様な協力メカニズムの特性を、(1)人間行動の行動経済学的基盤、(2)契約、交渉、組織のゲーム分析、(3)社会選択論と制度形成、の三つの視点から考察する。さらに、理論成果を現実経済の諸問題の分析に応用する。 平成28年度の研究実績は、次の通りである。「人間行動の行動経済学的基盤」の研究では、市場における戦略的行動や予測のゆがみと情報の曖昧さとの関連を研究した。特に、曖昧情報の戦略的効果を市場における貯蓄問題の文脈で研究し、将来の所得リスクが一定でもリスク評価がより曖昧になる環境において予備的な貯蓄が生ずる条件を明らかにした。ナイト的不確実性下のグローバルゲームの分析とその金融危機への応用に関する研究を行い,不確実性が増すことで均衡が一意になり得ることを明らかにした。 「契約、交渉および組織のゲーム分析」の研究では、不完全公的観測の繰り返しチーム生産モデルを分析し、チームの構成員が成果の分け方(シェアリングルール)を選ぶとき、総利得最大化を達成する均衡およびその背後にあるシェアリングルールを特徴付けた。非協力交渉モデルの均衡分析を発展させ、不完備契約と私的情報下での合意との関連を考察した。 「社会選択論と制度形成」の研究では、社会的義務感や公平性に関わるモラル、人口規模や選好の異なるグループの存在を許す社会選択理論の統一的な理論的枠組みを構築し、社会的協力の評価基準を公理的に研究した。国際政治経済システムにおいて利害対立の可能性と曖昧情報との関連を分析する予備的研究を実施した。 得られた成果を研究論文にとりまとめ、国内外の研究者と研究討議を実施するとともに、研究成果を総括するために平成29年3月4-6日にゲーム理論ワークショップを電気通信大学で開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
三つの研究班は、それぞれの実施計画に沿って、経済社会における多様な協力メカニズムの特性を理論的に解明するとともに、理論成果を実際の問題に応用することができた。研究成果に基づく論文執筆と研究発表も活発に実施でき、当初の計画以上に進展していると評価できる。 具体的には、「人間行動の行動経済学的基盤」の研究班では、曖昧情報に基づく新しい市場理論の構築を目指し、曖昧情報の理論を市場における貯蓄問題に応用できた。ナイト的不確実性下のグローバルゲームの分析を金融危機問題に応用し,不確実性が増すことで均衡が一意になり得ることを明らかにした。 「契約、交渉および組織のゲーム分析」の研究班では、不完全公的観測及び不完全私的観測の繰り返しゲームモデルをチーム生産における協調問題や複数同時寡占市場のカルテル形成問題に応用し、新しい成果を得た。計算科学者グループとの共同研究を推進し、複雑な情報構造下における繰り返しゲームの協調的均衡の具体解導出という一つの難問について一定の成果を得た。不完備契約理論と情報不完備下での交渉理論との融合を試み、不完備契約の理論的基礎の新しい視点を得た。 「社会選択論と制度形成」の研究班では、国際政治経済システムにおける利害対立の発生と曖昧情報との関連を分析し、曖昧情報の存在が利害対立の原因となることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度以降も研究課題の目的を達成するために、ゲーム理論の先端的な研究手法を用いて経済社会における多様な協力メカニズムの研究を理論と応用の両面から推進する。推進にあたっては、三つの研究班の有機的連携を保つことに留意するとともに、経済学の分野を超えた広範囲の分野の研究者との学際的な研究交流を行う。これまでの共同研究をさらに発展させ、不完全情報下での長期的関係における協力メカニズムの分析に計算可能性および実験による検証という新しい視点を組み込む。研究成果の研究討議の場として、ゲーム理論ワークショップ(2018年3月)の開催を継続する。
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