研究課題
本研究の目的は、潜在能力アプローチの実証的適用を図るための基礎理論を提供することにある。潜在能力アプローチは個々人の状態を多層的に記述し、分析することを可能とする。これにより個人の客観的な潜在能力(well-being vector選択肢の集合)ならびに多層的な選好評価が、財空間・財-利用能力空間・機能空間という3種類の空間で捕捉される。経済学で伝統的な効用アプローチは主観的な効用概念を基礎とすることにより、分権化された個々人の視点から、効率的配分を一意に導出することを可能としてきた。これに対して、潜在能力アプローチの特性は伝統的な効用アプローチにおける効率的配分の実現可能性をいったん放棄したうえで、主題と文脈に応じて公理を課しながら、個人内・個人間比較可能性の範囲を拡げていくマニュアル性にある。この潜在能力アプローチのマニュアル性は資源配分の公正性のみならず効率性に関しても新たな光を与える。本年度は特に、効率性に着目して、理論研究と実証研究に取り組んだ。理論の主要な結果は以下の通りである。本人の主観的評価関数から構成される「社会的評価関数」の均衡配分は、本人の福祉(well-being)上に直接定義される「社会的福祉(well-being)関数」のそれによってパレート支配される可能性があること。この結果は厚生経済学の基本定理に含意をもつ。さらに、これは①視覚障害者の移動潜在能力調査の結果の解釈方法、②「障害者・高齢者の地域公共交通へのアクセシビリティ指標」の開発と潜在能力の測定方法、③日本・スウェーデン患者比較調査に基づいて、機能ベクトルの実現値から潜在能力を推定する作業に影響を及ぼす。総じて、本人の主観的効用(満足指標等)に基づいて得られる「効率性」を、本人の客観的な機能あるいは潜在能力の観点から批判的に問い返す公共的推論の可能性が理論的・実証的に確認された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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