研究課題/領域番号 |
26245041
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大竹 文雄 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (50176913)
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研究分担者 |
佐々木 勝 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (10340647)
伊藤 高弘 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (20547054)
窪田 康平 山形大学, 教育文化学部, 准教授 (20587844)
李 嬋娟 明治学院大学, 国際学部, 講師 (40711924)
小原 美紀 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (80304046)
安井 健悟 立命館大学, 経済学部, 准教授 (80432459)
奥山 尚子 神戸大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (80617556)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | インターネット調査 / 非認知能力 / 労働市場 / 性格特性 / 幸福度 / ソーシャルキャピタル / 互恵性 / 利他性 |
研究実績の概要 |
Ohtake, Yamada and Yamane(2016)では、東日本大震災の発生直後から5週連続で5都市において、5回にわたって同じ人に幸福度を調査した結果を用いて、震災被害のニュースが幸福度に与える影響を分析した。その結果、震災被害のニュースが幸福度にマイナスの影響を与えるのは、被災地に近いか大きな地震を経験した地域に限られていたことを明らかにした。 Lee and Ohtake(2016)では、ビッグ5と呼ばれる性格特性が労働市場でのパフォーマンスに与える影響について、日米比較研究を行った。従来、勤勉性は賃金にプラスであるが、協調性の高さは賃金に影響しないと米国の研究では報告されてきたが、1000人以上の大企業では日米共通に協調性が高いことが賃金を高める影響があることを明らかにした。一方、協調性の高さは日米ともに昇進には影響を与えないことを示した。 Ito, Kubota and Ohtake(2016)は、小学校教育における隠れたカリキュラムが社会的選好や経済的価値観に与える影響について、継続的な研究を行ったものである。この論文では、5つのグループに分けられた隠れたカリキュラムの中で参加型学習の経験は互恵性や利他性にプラス、非競争的教育の経験は互恵性や利他性にマイナスの影響を与えることを明らかにしていたが、学校選択の内生性の可能性が小さいことについての分析を新たに行った。 Yamamura, Tsutsui and Ohtake(2016)では、相対的所得地位別、内閣支持別に選挙結果が幸福度に与える影響を分析した。その結果、小泉政権では、所得階層にかかわらず内閣支持者は幸福になっていたが、安倍政権では所得階層の低い内閣支持者の幸福度は高まらなかったことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H27年度は、査読付き国際学術誌に掲載ないしアクセプトされたものが5本(Scientific Reports (1本), Japanese Economic Review(2本), Asian Economic Policy Review(1本), International Economic Review(1本))であり、DPとして3本の論文を発表した。研究成果の発表としては、目標を十分に超えていると判断できる。 本年度は当初東日本大震災に関するアンケート調査を新たに行うという予定にしていたが、研究代表者が参加している阪大GCOEパネル調査に必要な調査項目が入ったため、H26年度に行った隠れたカリキュラムに関するアンケート調査の追加調査を行った。具体的には、時間割引率、危険回避度、利他性などの指標と育った家庭環境に関する情報、労働時間に関する情報を集め、9,232人から回答を得た。 H26年度およびH27年度に行った隠れたカリキュラムに関する大規模アンケート調査を用いたデータ解析を進めた。小学校における参加型学習の経験、地蔵、寺社の存在が一般的信頼や互恵性などのソーシャルキャピタルのレベルを高めていることを実証的に確認した。また、これらの環境がソーシャルキャピタルの操作変数として、ソーシャルキャピタルが賃金や労働時間に与える影響を推定し、ソーシャルキャピタルから賃金への因果効果がないことを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
H28年度においては、H26年度およびH27の調査で得られたデータをもとに、隠れたカリキュラムおよび家庭のもつ文化、地域コミュニティの文化がソーシャルキャピタル、経済的価値観、幸福度、満足度、性格特性にどのような影響を与えるかを引き続き分析する。分析結果を踏まえて、新たなアンケート調査の設計を行う。また、阪大GCOEパネル調査に質問を追加することで、東日本大震災および熊本地震がソーシャルキャピタルや経済的価値観などに与えた影響を分析可能にする。
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