研究課題/領域番号 |
26245041
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大竹 文雄 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (50176913)
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研究分担者 |
佐々木 勝 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (10340647)
窪田 康平 山形大学, 地域教育文化学部, 准教授 (20587844)
李 嬋娟 明治学院大学, 国際学部, 准教授 (40711924)
小原 美紀 大阪大学, 国際公共政策研究科, 准教授 (80304046)
安井 健悟 青山学院大学, 経済学部, 准教授 (80432459)
奥山 尚子 大阪大学, 経済学研究科, 招聘研究員 (80617556)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ソーシャル・キャピタル / 信頼 / 互恵性 / 所得 / 互恵性 / 幸福度 / 宗教 / 健康 |
研究実績の概要 |
伊藤・窪田・大竹(2017)は、一般的信頼、互恵性、利他性などのソーシャル・キャピタルが、所得・従業上の地位・管理職という労働市場でのアウトカムと幸福度・健康水準に与える影響を個人に関する独自のアンケート調査をもとに検証した。ソーシャル・キャピタルの内生性に対処するために、小学生の頃に通学路および自宅の近隣に寺院・地蔵・神社があったか否かという変数を用いた。分析結果は操作変数法の有効性を示しており、推計結果からはソーシャル・キャピタルが高くても労働市場でのアウトカムには影響しないが、幸福度および健康水準を高めることが示唆された。また、労働市場でのアウトカムを高めない理由として、ソーシャル・キャピタルが高いと地域間移動が減少するという事実の存在を示した。さらに、これらの結果は、地域、仕事、所得、家族、友人、余暇などの対象別の満足度にソーシャル・キャピタルが与える影響とも整合的であった。 Sasaki, Akesaka, Kurokawa, Ohtake(2016)は、社会的地位が余命に与える影響を、日本の著名な文学賞である芥川賞と直木賞の受賞者と非受賞候補者の比較を統計的に行って明らかにした。社会的地位の上昇が、余命に与える影響は、理論的には上昇させる効果と下落させる効果の両方が考えられる。社会的地位が高まることで経済的に安定し、相対的所得も高まる効果は余命を延ばす効果がある。一方で、社会的地位の上昇により、仕事量が増え、仕事のコントロールが不可能になるとストレスが高まり、余命を短くする可能性がある。分析の結果、純文学の新人賞である芥川賞の受賞では前者の効果が上回り余命を長くし、主に大衆小説の中堅作家にあたえられる直木賞の受賞では後者の効果が上回り余命を短くすることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度は、Journal of Behavioral Economics and Finance, Japanese Economic Review (3本)、 Journal of the Japanese and International Economies, Review of Economics of the Household、経済分析 に論文が掲載され、DPとして2本の論文が発表された。多くの学会で研究成果は報告されており、研究成果の発表としては、十分に目標を超えていると判断している。 阪大GCOEパネル調査で、本研究プロジェクトで用いる行動経済学的な質問項目を追加することができたため、この調査結果を用いた研究を継続することが可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度においては、今までの調査で得られたデータをもとに、行動経済学的特性が、労働市場、家族形成、健康、幸福度、資産形成に与える影響について、引き続き研究を行っていく。
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