研究課題
単一NVセンターの電子スピンは、「室温電子スピン」と呼ぶにふさわしい特性（光による初期化・読み出し、マイクロ波パルスによるコヒーレント操作、長いコヒーレンス時間）をもっている。本研究では、コヒーレント結合したNVセンター配列を作製し、室温動作の量子レジスタを数量子ビットに拡張することをめざした。このためEBリソグラフィで作製した規則的に並んだナノホールを持つレジスト・マスクを用い、平坦な成長面を持つ12C濃縮・高純度CVDダイヤモンド結晶に、窒素分子イオン（15N2+、20 keV）注入、熱処理（1000℃）によって、距離～13 nmのNVセンター配列を蛍光スポット配列として作製する技術を開発した。NVセンター数/スポットのポアッソン分布の平均値（0.97～20）の制御、および、ODMR周波数から個々の電子スピンを識別できる2～4個の配列作製の再現性が確認された。これにより、電荷安定化のための燐ドープ、コヒーレンス時間を改善するための追成長に取り組む段階に進むことができる。2.5 keV窒素イオン注入とナノホール（径20 nm）注入を組み合わせ、共焦点顕微鏡で読み取れるアドレスをもつ、浅い単一NVの配列（ポアッソン分布の平均値1.40）の作製に成功した（イマージョンオイルの1H-NMRにより測定した深さは2～10 nm）。望みの深さのNVに再現性良く容易にアクセスできるナノNMR用量子センサーアレイが作製できた。「室温量子スピン」が相互作用する量子多体系として、平均距離5 nmの高濃度のNVセンターを高温電子線照射により作製した。このうち３次元の不規則性を持つ～100万の室温電子スピンの集団を用いて、室温での離散的時間結晶の生成を実証することに成功した。この結果は捕獲イオン10個を1次元に並べた極低温の実験（メリーランド大学）の論文と並んでNatureに掲載された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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