研究課題
平成29年度に得られた最も重要な成果は、単原子層hBNがシリセンと相互作用しない酸化防止膜として有効であることを実証したことである。ZrB2薄膜表面を窒化・加熱すると、その表面にエピタキシャルに単原子層hBNが形成され、そこにSiを蒸着すると、hBN-ZrB2間にSi原子が拡散し、hBNに被覆されたシリセンが形成される。通常、シリセンは、大気に5分間曝露すると完全に酸化されるが、hBN層に被覆されたシリセンは1時間大気に曝露しても、全く酸化されなかった。超高真空装置から大気中に取り出すことのできなかったシリセンを別の装置に移送できることを意味し、大きなブレークスルーである。また、申請時の計画にない成果として、シリセンと有機分子のつくる界面の理解が進んだ。シリセン上に鉄フタロシアニン(FePc)分子を蒸着したところ、シリセンとZrB2薄膜との格子不整合により生じる縞状ドメインの境界に沿って活性なSi原子が存在し、そこに分子が固定されることが走査トンネル顕微鏡観察から明らかとなった。ダイヤモンド構造のSi表面には反応性の高い未結合手が存在し、化学反応により分子を壊す。シリセンとFePc分子の場合は、分子の中心にある鉄原子が前出のSi原子と強固に化学結合しているものの、フロンティア軌道を含む分子の電子構造は大きく変化しておらず、その性質が保たれていることが実験と第一原理計算により明らかとなった。この他にも、シリセンとの格子整合性に優れたセレン化ガリウム(GaSe)薄膜試料を基板としてSi蒸着実験を行い、内殻光電子分光によりSi層とGaSe基板の結合状態を明らかにしつつある。GaSeを保護層としてシリセン上に形成する際には、SeとSiの反応性が問題となるが、この点についても放射光施設における光電子分光を用いて詳細な実験を行い、重要な知見をまとめた論文が査読付論文誌に掲載された。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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Surface and Interface Analysis
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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https://www.jaist.ac.jp/whatsnew/press/2017/10/12-1.html