研究課題
非大気暴露条件で活性電池材料をグローボックスから超高圧電子顕微鏡に転送するホルダーが平成27年度末までに完成し、所定の高分解電子顕微鏡像も標準試料を使って得られている。平成28年度には以下の実験を行った。(1)実際に電極に使用されているリチウムコバルト酸化物や固体電界質材料を種々の雰囲気のもと反応科学超高圧電子顕微鏡で10回程度観察した。(2)得られたデータを、電池実験などで得られる状態解析データと付き合わせ、画像データの材料学的解釈を、電池材料専門家とともにおこなった。(3)リチウム酸化物の熱相変態のその場観察結果を2つの国際会議で発表した。(4)不活性ガスで満たされたグロボックス中で、リチウム金属薄膜を本研究で開発した「非大気露出ホルダー」に搭載し、超高圧電子顕微鏡まで非大気露出条件で転送して、観察を行う手順を確認した。(5)まとめの平成29年度に向けて、新しいタイプのリチウム/シリコン電池のモデル試料を作製した。
2: おおむね順調に進展している
(1) 平成28年度は、リチウム電池正極の代表的材料であるLiCoO2の加熱反応時構造相変態を1 MV超高圧電子顕微鏡、および200kV 収差補正電子顕微鏡でその場観察できている。(2) これまでのX線回折法による研究論文と今回のその場電子顕微鏡観察の結果については、電子回折図形とX線回折データが互いに比較可能であり、さらに極めて有用な追加データになりうる、実空間における構造変態もその場で追跡できることが判明している。(3) 不活性ガスで置換したグローブボックス中で、リチウム関連材料を載せる試料ホルダー先端部を、平成28年度には、2個追加製作し、これを共同研究者に供与してこの小型先端部で電池特性を測定してもらう体制が整った。実際のグローボクス内での転送は平成29年度に持ち越しとなった。(4) リチウムコバルタイト(LiCoO2) の電子エネルギー損失分光実験はすでに反応科学超高圧電子顕微鏡で実施すみであり、酸素の脱離などに伴う、構造変態について元素種の減少の観点から追跡できるようになっている。
本科研費で計画していた設備開発は平成28年度までにほぼ終了している。残るは、上記の(3)の嫌気性が強いリチウム電極の非大気露出転送およびその場観察である。またさらには、次世代電池であるLi/Si系電池電極の界面構造のその場観察を平成29年度に行う予定である。
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