研究課題/領域番号 |
26246014
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長谷川 達生 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00242016)
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研究分担者 |
山田 寿一 独立行政法人産業技術総合研究所, フレキシブルエレクトロニクス研究センター, 研究員 (20358261)
峯廻 洋美 独立行政法人産業技術総合研究所, フレキシブルエレクトロニクス研究センター, 研究員 (50573143)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | プリンテッドエレクトロニクス / 二分子膜 / 両親媒性分子 / 有機半導体 |
研究実績の概要 |
本研究は、近年新しい製膜パターニング法として注目される印刷技術を活用し、非対称な両親媒性有機分子による独立二分子膜を、望みの位置に望みの数だけ構築・配列する技術の開発、及びそれらの応用展開を目的とする。本年度は初年度として、様々な非対称有機分子を対象とし、印刷法による独立二分子膜の構築について検討を行った。その結果、特に両親媒性分子として、π電子骨格からなるフェニル-ベンゾチエノベンゾチオフェン(Ph-BTBT)にアルキル鎖を付与した非対称Ph-BTBT-Cn系分子が、印刷による製膜性にきわめて優れた二分子膜構造を構築することを見いだすとともに、そのアルキル鎖長依存性から、二分子膜構造の形成には、一定以上の長さのアルキル鎖が必要なことを見いだした。まずPh-BTBT-C10系において、溶液からの再結晶法により得た単結晶を用いたX線結晶構造解析に成功し、これにより、棒状のPh-BTBT-C10分子が全て同一方向に配向・整列した分子層を形成するとともに、これら分子層が、分子配向を互い違いに向き合うように積み重なった二分子膜構造を形成していることを明らかにした(APEX vol.7, p.091601, 2014)。続いて付与するアルキル鎖長を系統的に変化させたPh-BTBT-Cn系分子(n=0~14)を合成し、その結晶構造のアルキル鎖長に対する依存性から、二分子膜構造がn=5以上で初めて発現することを明らかにするとともに、印刷法に用いる上で重要な溶解度や熱安定性がこれら結晶構造と密接な相関を持つことを明らかにした(論文投稿中)。さらにこれら材料を対象とし、印刷技術を用いた製膜プロセスの検討を行い、その結果、ブレードコート印刷法を用いることにより、2~6分子層程度の厚みが1 mm×1 mmの面積にわたって保たれる、きわめて高品質な二分子膜構造の構築に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の取り組みにおいて印刷技術を用いた製膜について様々な検討を行った結果、印刷法によって安定な人工独立二分子膜構造を構築するためには、生体で用いられるリン酸系脂質分子を用いるより、パイ電子系骨格とアルキル鎖を結合させた非対称分子を用いることが、より有効なことが明らかになった。これはパイ電子骨格どうし、及びアルキル鎖どうしの分子間相互作用の重畳によって、二分子膜構造がより大きく安定化するためと考えられる。特に二分子膜構造に関する結晶構造解析、及びアルキル鎖長の系統的変化による安定性の議論はこれまでに例がなく、初年度ながら学術的にきわめて重要な成果が得られたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度重要な成果が得られた二分子膜構造の構築を基盤として、さらに様々に化学置換を行ったBTBT系非対称分子を用いた印刷製膜プロセスの研究を進める。これにより製膜性にきわめて優れた材料を用いた高品質な膜形成法の開発にさらに取り組むとともに、得られた二分子膜の機械的安定性の評価とその分子論的な解明、及びイオンチャネル分子を膜内に高効率に導入する手法や、半導体デバイス構造の構築など、可能な応用展開について検討する。
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