研究課題/領域番号 |
26246015
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
小林 康之 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (90393727)
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研究分担者 |
岡本 浩 弘前大学, 理工学研究科, 教授 (00513342)
中澤 日出樹 弘前大学, 理工学研究科, 准教授 (90344613)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 分子線エピタキシー / 六方晶窒化ホウ素 |
研究実績の概要 |
研究代表者らは、2012年に六方晶窒化ホウ素(h-BN)がGaN系デバイスの機械的転写の剥離層として機能することを発見した。本研究は、上記発見をさらに発展させ、未解決の基礎物性を明らかにし、その結晶性を改善し、最終的に転写デバイス特性をさらに向上させることが目的である。そのサファイア基板上h-BN上GaN系薄膜成長の結晶機構を解明するために、成長表面をその場観察することが必要であり、分子線エピタキシー装置(MBE)を用いてh-BN薄膜を成長し、その成長機構をモニターすることが必要になる。研究代表者らは平成26年度にh-BN用MBE装置を安全に設置し、稼働させ、平成27年度に、個別装置の故障等に伴うメンテナンス等を行い、MBE装置を安定して稼働させた。今年度、MBEにより、サファイア基板上にBN成長を行った。原子間力顕微鏡、紫外可視分光光度計、フーリエ変換赤外分光光度計、透過型電子顕微鏡により評価を行った結果、BN層の膜厚は3nm程度であり、そのBN層の結晶構造はアモルファスであることがわかった。BN成長中の活性窒素の供給量が不足していることが、サファイア基板上にMBEにより成長したBN層の結晶構造がアモルファスである原因であると考察し、窒素プラズマのパワーと窒素流量を増大し、さらに結晶性を向上させるために、基板温度を950℃から1000℃以上まで増加させて、BN薄膜のMBE成長を行っている。このように、サファイア基板上に単結晶h-BN薄膜を成長するためには、窒素プラズマソースからの活性窒素の制御が重要であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MBE装置を弘前大学に安全に設置することができたが、一度MBE装置全体を分解、洗浄したため、個別装置の故障が相次ぎ、今年度もゲートバルブの故障、冷却水バルブの故障、基板ホルダーのトラブル等が生じた。これらの故障を修理、また部品の改良を行い、MBE装置は安定して稼働し、サファイア基板上にMBEによりBN成長を行うことができている。サファイア基板上のMBEによる単結晶h-BN成長の実現はまだ世界的に報告されておらず、大きなマイルストーンである。今年度、MBE成長時の活性窒素の制御が重要であることを見出したことは、今後の研究遂行上大きな成果であると考えているためである。
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今後の研究の推進方策 |
MBEによりサファイア基板上に単結晶h-BNを実現するためには、活性窒素の制御と基板温度の高温化が重要であると考えており、この最適化により、できるだけ早くサファイア基板上単結晶h-BN成長の実現を目指す。また、成長機構を原子レベルで解明するために、反射高速電子線回折(RHEED)のその場観察が重要であるため、このRHHEDによるその場観察に重点をおいて、研究を推進していく。
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