研究代表者らは、2012年にh-BNがGaN系デバイスの機械的転写の剥離層として機能することを発見した。本研究は、上記発見をさらに発展させ、その成長機構を解明し、その結晶性を改善することが目的である。まず、(0001)サファイア基板上にプラズマ支援分子線エピタキシー(MBE)によりBN薄膜を基板温度1000℃で成長した。BN薄膜のX線反射率プロファイルと原子間力顕微鏡とFTIR測定から、MBEにより(0001)サファイア基板上にsp2結合を有する膜厚16nmの原子レベルで平坦なBN薄膜が得られたことがわかった。次に、MBEにより(0001)サファイア基板上に、1.5nmと3nmの膜厚を有するh-BNバッファ層を成長し、そのh-BNバッファ層上にMBEにより0.3μmのGaN薄膜を成長した。X線回折による評価から、GaN(0002)ピークのみが観測され、h-BNバッファ層上にMBE成長したGaN薄膜は単結晶であることがわかった。しかし、そのGaN(0002)X線回折強度は、h-BNバッファ層の膜厚が1.5nmから3nmに増大するにつれて急激に減少することがわかった。このh-BNバッファ層上のGaN薄膜の結晶性を向上させる目的で、(0001)サファイア基板上膜厚3nmのh-BN層とそのh-BNバッファ層上に膜厚0.15μmのAlNバッファ層を基板温度1000℃で成長しその後800℃で膜厚0.3μmのGaN薄膜を成長した。h-BN/AlNバッファ層上のGaN薄膜は、(1×1)のRHEEDパターンを示し、h-BN/AlNバッファ層上のGaN薄膜のX線回折のGaN(0002)回折ピーク強度は、h-BN上GaN薄膜の回折ピーク強度と比較して著しく増大することを見出した。このことは、h-BNバッファ層上のAlNバッファ層の導入がGaN薄膜の結晶性を大きく向上させることを示している。
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