SiCパワーデバイスの真の実力を発揮させるには、SiC基板結晶の高品質化は絶対条件である。SiC溶液成長法は、超高品質結晶育成法の急先鋒といえる。我々はX線トポグラフィー測定を駆使することで、成長過程における貫通転位変換減少が低転位密度化のカギであることを明らかにした。また、成長界面に形成されるマクロステップが変換現象と関連していることがわかってきた。ただ、この変換現象のメカニズムはわかっていない。本研究では、名古屋大学が得意とするトポグラフィー技術により結晶中の転位挙動と固液界面のマクロステップ構造をその場測定することを目的とした。これまでに、最高温度2000℃まで昇温することができる小型ヒーターを設計・開発し、高温環境下でトポグラフィーを測定する技術を確立した。また、それを使って実際に結晶を高温環境下で測定し、転位のトポグラフィー像の撮影にも成功した。さらには、欠陥の一つである積層欠陥については、高温環境下で、拡張していく様子や逆に収縮する様子をとらえ、その挙動の温度依存性やそのメカニズムまで言及することができた。積層欠陥の高温アニール時の挙動はデバイスプロセスにおいて、現在大きな問題となっており、それに対して非常に重要な知見を与えた。また、同時に固液界面を観察するために、レーザー干渉計を組み込んだ光学顕微鏡観察装置もヒーターに設置した。これによりマクロステップの高温環境下での撮影に成功している。ただし、当初予定していた成長過程におけるトポグラフィーと光学顕微鏡観察の同時測定には至らなかった。その代りに、トポグラフィー測定におけるX線の入射角を調整することで、トポグラフィー像でもマクロステップが撮影されることがわかった。これにより、マクロステップに追随するように変換した転位が進展する様子を確認することができた。
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