研究課題
遷移金属酸化物は、通常の半導体(Si, GaAs, GaN, SiC等)には見られない多彩な機能特性を示すことから、次世代エレクトロニクス材料として活発な研究が展開されている。近年、酸化物作製技術が急速に発展したことにより、原子レベルで急峻な界面を有する薄膜やヘテロ構造の作製が可能になり、新しい物性・機能が見出されている。このような酸化物薄膜やヘテロ構造が示す機能特性の探求・解明のためには、酸化物薄膜について、電子状態評価を原子レベル空間分解能で行うことが重要である。そこで、我々は独自の走査トンネル顕微鏡-成膜装置複合システムを構築し、研究を進めている。本年度はSrVO3の原子配列解明と、超伝導状態にあるLiTi2O4の走査トンネル顕微鏡観察に注力した。SrVO3については、薄膜作製後の最表面の原子配列を詳細に調べた。この情報は、ヘテロ構造を作製する、あるいは表面物性を活用する上で、極めて重要な情報である。そこで、第一原理計算の状態密度評価、および、像シミュレーションを実験結果と比較した。その結果、薄膜最表面はVO2で終端され、さらに、そのV原子の半分にO原子が吸着していることがわかった。そのO原子が吸着していないところは、暗点としてSTM像に現れる。LiTi2O4表面においては、O原子で終端されている場合では、実験結果と計算結果は合わないことから、Tiで終端していることを確認した。そして、Liが欠損している部分があることがわかった。さらに、超伝導状態のトンネルスペクトルを計測し、ボルテックス観察に成功した。
2: おおむね順調に進展している
原子配列の決定は、電子状態を理解する上でも最も重要である。理解が着実に進んだので、順調に進展していると判断できる。
平成29年度が最終年度であるため、成果を論文にまとめるための詰めを行う。論文作成を進め、それに足りないデータを着実に取得していく。また、情報科学との連携も模索する。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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