研究課題
高速のC60イオン照射による2次イオン放出のメカニズムを解明するために、統合熱スパイクモデルを基にして、イオン照射時に表面から放出される分子およびその解離片の収量を計算するモデルを構築した。このモデルを用いて5 MeVのC60イオンを非晶質シリコン窒化膜に担持したフェニルアラニン試料に照射したときに、前方および後方に放出される無傷の分子および解離片の収量を計算した。その結果、前方放出では無傷の分子の収量と解離片の収量の比が後方放出に比べて大きくなるという実験結果を説明することができた。一方、昨年度に完成した分子イメージング装置で、2次電子顕微鏡の焦点調整の際に使用する水銀ランプ照射により試料基板の非晶質シリコン窒化膜が破れることが問題であった。今年度は、まず水銀ランプの光量を調整して非晶質シリコン窒化膜の破損を防ぐことを検討した。しかしながら、破損が生じない光量では焦点調整に必要な明るい光電子像が得られないことが判明した。そこで、試料と同じ位置にシリコンウエファーの標準試料をおいて焦点調整を行った後に、フェニルアラニンをパターン蒸着した非晶質シリコン窒化膜試料に交換して、分子イメージングを試みた。開発した装置を京都大学の量子理工工学研究センターの加速器に接続して、6MeVの銅イオンを1次イオンとして測定を行ったところ、分子イメージングが可能であることが示されたが、空間分解能は5μm程度であった。そこで、個々の高速イオン照射により放出される2次電子像を用いて、実際の試料で2次電子顕微鏡の焦点調整をする方法を考案した。その結果1μm程度の空間分解能で、分子イメージングが可能であることを実証できた。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B
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http://dx.doi.org/10.1016/j.nimb.2017.01.020
http://dx.doi.org/10.1016/j.nimb.2016.12.019