研究課題/領域番号 |
26246026
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
楊 金峰 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (90362631)
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研究分担者 |
吉田 秀人 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (00452425)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 電子顕微鏡 / 時間分解電子顕微鏡 / 高速電子線回折 / フェムト秒時間分解イメージング / ビーム応用 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、短パルス・単色性を兼ね備えた時間分解能電子顕微鏡の新型電子源を設計・製作し、フェムト秒時間分解電子顕微鏡像検出器を開発した。 (1)RF加速空洞の構造を楕円形状に設計し、超精密ダイヤモンド加工して、新たなフェムト秒フォトカソードRF電子銃を製作した。これによりRF電場による電子の横方向運動量の増大を極力に抑え、電子ビームのエミッタンスとエネルギー分散(エネルギー幅)の低減ができた。実証実験では、新たに製作した磁気レンズと直径0.5mmの絞りを利用したこと、目標の0.1mm-mradの低エミッタンス電子ビームの発生に成功した。また、新たなRF電子銃では、フォトカソードが交換可能な機構を設計され、これによりレーザーの波長に対応したフォトカソード材を選定し、電子の初期エミッタンスやエネルギー幅が低減でき、更になる単色かつ高輝度の電子ビームが発生可能である。 (2)超高速イメージ測定には、電子の高感度検出は極めて重要である。特に、不可逆過程への測定を実現するためには、少ない電子数の条件でのシングルショットの測定が望まれる。そこで、今までの研究実績と経験を活用し、TlをドープしたCsIの柱状結晶化素子、光ファイバープレートと高感度CCDカメラから構成された検出器を開発した。この検出器は、各発光領域の空間分解能として50ミクロンを有する。電子線回折の実験では、この検出器を用いてエネルギーが3MeV、電子数が10の5乗個のパルスを利用した単結晶金における電子回折のシングルショット測定に成功し、極めて鮮明なMeV電子線回折パターンが測定できた。得られた回折パターンの明瞭さにより、本研究で開発したRF電子銃から発生した電子ビームは優れた単色性と低エミッタンスを示している。また、時間分解測定実験では、フェムト秒時間分解能を有する高速MeV電子線回折の記録・解析手法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)今までのSバンド(2856MHz)常伝導フォトカソードRF電子銃の研究では、RF発熱により最高運転繰返しが120Hzまでに限定され、高繰返しのビーム応用が実現されていない。本研究で製作した新型RF電子銃では、熱を除去し易い新たにRF加速空洞を設計し、冷却システムの改良と冷却機能の増強を行うことにより熱を効率的に除去し、世界に先駆けて最高運転繰返しが1kHzを有する常伝導SバンドフォトカソードRF電子銃を設計・製作した。この成果は、RF電子銃を用いた時間分解電子顕微鏡の実用化に大きな一歩前進した。また、これのみならず、X線自由電子レーザーなどの先端加速器の開発とビーム利用にも大きく貢献することになる。 (2)本研究で開発したTlをドープしたCsIの柱状結晶化素子を用いたフェムト秒時間分解能を有する高速MeV電子線イメージングの検出器は、X線ノイズに対しても強く、極めて電子数が少ないパルスと相対論的なエネルギー領域でのシングルショット電子回折像の測定可能である。この成果は、フェムト秒時間分解電子顕微鏡の実現とこれを用いた今まで不可能であった非可逆超高速原子ダイナミクスの研究を、現実の課題へと転化される大きな成果になっている。
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今後の研究の推進方策 |
製作・開発した新型RF電子銃、コンデンサーレンズ、検出器と記録・解析法を用いて、フェムト秒時間分解電子顕微鏡の実証実験を行い、フェムト秒時間領域での超高速構造変化ダイナミクスの測定技術を確立する。そのために、 1)今までの基盤研究[A](H22~H24)「フェムト秒時間分解電子顕微鏡の基盤研究」で開発した原理実証機(現有装置)を改良し、フェムト秒時間分解MeV電子顕微鏡を製作する。 2)フォトカソードRF電子銃から発生した電子ビームの特性を評価し、電子ビームのエミッタンスやエネルギー分散による顕微鏡像の影響(コントラストや分解能など)を実験的に解明する。 3)開発したMeV電子線イメージングの検出器と電子顕微鏡の標準サンプルを用いて、拡大倍率や空間分解能の評価を行う。得られた結果をフィードバックして装置の改良と高度化を行う。 4)平成28年に新たに中間レンズを設計・製作し、目標の1nmの空間分解能の実現を目指す。また、ポンププローブの時間分解測定システムを構築し、フェムト秒時間領域での光誘起高速構造変化の観測手法を確立する。
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