研究実績の概要 |
1)従来の電子顕微鏡では、電子銃から発生する直流的電子線をクロスオーバさせてビーム径を小さくし、輝度を向上している。しかし、ビーム径が小さい電子線パルスを輸送する際、空間電荷による開き角やエネルギー幅を増大してしまい、空間分解能が得られない致命的な問題がある。本研究では、RF電子銃の出口に第1集束レンズを用いてビームを平行化し、試料の直前に第2集束レンズを用いてビームを集束させる空間電荷の影響を回避できる電子線パルスビームの制御方法を確立した。これにより、世界初めて、エネルギーが3.1MeVのフェムト秒電子線パルスを用いた直径が400nmの金ナノ粒子の透過電子顕微鏡像の観測に成功した。本研究の「相対論的フェムト秒電子線パルスによる超高速電子顕微鏡実証機」では、電子レンズの制限により倍率が5,000倍にしか達していないが、今後中間レンズや投影レンズの増強により倍率を向上させ、マルチパルス積算測定により目標の1nmの空間分解能を達成できると考える。 2)試料にフェムト秒レーザーを導入し、時間分解電子回折の測定による光誘起構造相転移ダイナミクスの解析手法を確立した。試料として単結晶の金とシリコンを使用し、測定ではエネルギーが3.1MeV、パルス幅が100fsの電子線パルスを用いた。光と電子線パルスの時間遅延精度が14fsであった。金の光誘起相転移研究ではレーザー強度による異なった溶融ダイナミクスの観測に成功し、シリコンの光誘起相転移ではレーザー偏光特性の依存性の測定に成功した。また、対物レンズの磁極ギャップとボーア径を広げて(19mm×φ13mm)、起磁力が35kAT、最大磁場強度が2.3Tを有する励起レーザーの導入や「その場の観察法」を適用可能な広い試料室を製作し、温度、圧力等の外部要因への依存性を測定し、多方面から構造変化を解明するために必要不可欠な実験環境を備えた。
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