研究課題/領域番号 |
26246028
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
笹木 敬司 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (00183822)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 光ナノシェーピング / プラズモン / 金属ナノ構造 / 光渦ビーム |
研究実績の概要 |
本研究は、光の「大きさ」をナノサイズまで小さくするだけでなく、ナノスポットにおける光電場振幅・位相分布をシングルナノスケールで制御する、すなわち、光の「形」をナノ空間でコントロールする、新奇なナノプラズモニックシステムの創製に挑戦する。この光ナノシェーピングが実現できれば、分子・分子集合体の波動関数と光のナノ形状をマッチングさせることにより、禁制遷移の選択励起・許容遷移の完全抑制・均質媒質の第二高調波発生など、これまでの常識を打ち破る物質の光励起ダイナミクスや光反応プロセスが実現できる。金属2次元ナノギャップ構造体にラゲールガウス(LG)ビームを照射して多重極局在プラズモンを励振し、LGモードの運動量(波数)・スピン角運動量(円偏光)・軌道角運動量(螺旋波面)を転写して多重極モードの近接場干渉を制御するという独自のアイデアにより、ナノスケールで電場振幅・位相分布を自在に成形する光ナノシェーピング技術を世界に先駆けて開発している。また、デザインされた周期に金属ナノ構造体を配列することにより、LGビームを高効率にカップリングさせて多重極プラズモンを高Q値で共鳴励振するシステムを開発し、超高効率光反応プロセスや超高感度センサーに展開している。さらに、角運動量を付与したLGもつれ合い局在プラズモンを生成して、古典光の限界を超える微細多光子重合パターン形成の実現を目指して研究を進めている。本研究は、これまでの常識を打ち破る光物理・光化学現象の誘起や光分子認識などへの展開が期待できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、光ナノシェーピング制御システムにより、これまでの常識を打ち破る物質の光励起ダイナミクスや光反応プロセスの実現に挑戦した。色素分子二量体に反対称な2つの双極子(四重極子)を励起することは、光の回折限界によりできない(禁制遷移)が、数ナノメートルの距離で位相が反転する光電場を形成できれば、許容遷移(対称な2つの双極子状態)を完全に抑制して禁制遷移だけを選択的に励起することが実現できる。すなわち、光が持つ軌道角運動量をプラズモンに転写し、さらに分子の電子軌道運動に高効率で転写することにより、自在に遷移ダイナミクスをコントロールですことができる。新規なシミュレーション手法を開発し、金属ナノ多量体構造のギャップに生成されたナノ光渦中に分子を配置したときの分子の多重極遷移プロセスについて、その励起効率や各多重極の励起割合等を詳細に解析した。また、ナノギャップ中の分子の位置や方位、金属ナノ構造の形状やギャップサイズ、更には構造の歪み等をパラメータとして、多重極遷移ダイナミクスのシミュレーション解析を行い、高効率光反応プロセスへの展開について検討した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、シミュレーション解析の結果に基づいて、これまで光の回折限界によりできなかった物質の禁制遷移の誘起や特異な光励起ダイナミクス・光反応プロセスを光ナノシェーピング制御システムにより実現する。まず、光学特性がよく知られている蛍光分子を用い、各部位毎に異なる振幅・位相で光励振して特異な励起状態への遷移をコントロールする実験を行う。この特異な励起状態は放射ロスが小さく寿命が長いため、高効率な光反応プロセスへの展開が期待できる。また、ナノ局在光の形状とマッチングする立体構造の分子・分子集合体は実効屈折率が変化して局在プラズモンの共鳴周波数がシフトすることを利用した新しい光分子認識センサーを実現する。円偏光や螺旋波面のナノシュープ光を生成し、局在場中のキラル分子(エナンチオマー等)や液晶分子、DNAの構造に依存した共鳴スペクトルを観測して単一(少数)分子レベルの高感度キラリティー分析を実現する。さらに、スピン・軌道角運動量を付与したLG量子もつれ合い光子を金ナノギャップ構造に照射してもつれ合い多重極局在プラズモンを励振し、古典光の限界を超える分解能で2光子重合パターンを形成する世界初の実験にも挑戦する。
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備考 |
研究室HP http://optsys.es.hokudai.ac.jp/
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