研究課題/領域番号 |
26246036
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
白谷 正治 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 教授 (90206293)
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研究分担者 |
古閑 一憲 九州大学, システム情報科学研究科(研究院, 准教授 (90315127)
内田 儀一郎 大阪大学, 接合科学研究所, 准教授 (90422435)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | プラズマ / ナノ粒子 / 3Dプリンティング / ゆらぎ / 電子・電気材料 / 第3世代太陽電池 |
研究実績の概要 |
本研究では、申請者のこれまでのプラズマ中のナノ粒子についての研究を発展させて、大規模ナノシステムを自在に作製する『プラズマナノ粒子プリンティング』の実現に欠かせない学術基盤を確立する。この方法では、プラズマ中ナノ粒子に作用する力を利用して、ナノ粒子を高い位置決め精度で基板へと輸送・固着し、超高空間分解能、高スループットを実現する。具体的には、シランプラズマ中のシリコンナノ粒子を対象として、要素技術であるナノ粒子の位置決め、ナノ粒子固着に関わる学術基盤を確立する。将来的には、マクロスケールで大きなインパクトを与えている3Dプリンティングをナノメートルスケールで実現する『プラズマナノ粒子3Dプリンティング』として展開する。 平成26年度末までに、ナノ粒子の成長方程式におけるラジカルとナノ粒子のカップリングに関わる非線形項の寄与が振幅変調により大きくなり、成長揺らぎが抑制されサイズ分布が狭分散化することを見出した。また、ナノ粒子量の時空間ダイナミクスについて、プラズマ中乱流解析で用いられているバイスペクトラム解析を活用し、ナノ粒子量についてのトータルバイコヒーレンスからプラズマ摂動に対してナノ粒子量の揺動成分に非線形結合が存在することを確認した。この結果は、ナノ粒子とラジカルの非線形結合による成長が存在することを示すものである。また、ナノ粒子量やプラズマ(ポテンシャル、ラジカル密度)の時空間変化を調べたところ、ナノ粒子とプラズマの相互作用によりナノ粒子の成長と共にプラズマのマクロスコピックな構造も変化することを明らかにした。また、ナノ粒子作製装置を製作し、ナノ粒子射出方に関する実験を行うことが可能となった。また、ダブルプラズマを用いたコアシェルナノ粒子の作製と基板へのランダム配置を行い、量子効果を活用したマルチエキシトン型太陽電池への応用が可能であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究計画は、Siナノ粒子をコアとするコアシェルナノ粒子作製装置の製作と、ナノ粒子射出法の確立であった。コアシェルナノ粒子作製装置については、過去のナノ粒子作製法及び表面修飾法の知見を基に、まず、ダブルプラズマによるナノ粒子作製と表面修飾を行うためのものである。ナノ粒子を用いたナノデバイスの作製では、ナノ粒子サイズの単分散化が重要であり、ナノ粒子のサイズ分散について、ナノ粒子の成長方程式におけるラジカルとナノ粒子のカップリングに関わる非線形項の寄与が振幅変調により大きくなり、成長ゆらぎが抑制されサイズ分布が狭分散化する結果について、さらなる狭分散化を目指すため、ナノ粒子成長方程式における、ナノ粒子の成長ゆらぎ抑制に効果のある非線形項を明らかにする予定であった。 上記研究計画に対して、平成26年度末までに、(1)コアシェルナノ粒子作製装置を製作した。(2)ダブルプラズマによるSiをコアとしたコアシェルナノ粒子の作製して基板にランダム配置し、量子効果を利用したマルチエキシトン型太陽電池への応用が可能であることを示した。(3)ナノ粒子成長ゆらぎ抑制に効果のある非線形項の同定について、ナノ粒子量の時空間ダイナミクスについて、プラズマ中乱流解析で用いられているバイスペクトラム解析を活用し、ナノ粒子量についてのトータルバイコヒーレンスからプラズマ摂動に対してナノ粒子の揺動非線形結合が存在することを確認した。 以上の3点により、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度についても、平成26年度に引き続き、(1)反応性プラズマ中ナノ粒子物性の揺らぎ機構およびナノ粒子とプラズマの相互作用を起因とするナノ粒子含有プラズマの構造形成機構の解明と(2)ナノ粒子射出法の確立を行う。 (1)反応性プラズマ中ナノ粒子物性の揺らぎ機構およびナノ粒子とプラズマの相互作用を起因とするナノ粒子含有プラズマの構造形成機構の解明について、平成27年度は、さらなる狭分散化を目指すため、ナノ粒子成長方程式におけるナノ粒子の成長ゆらぎに抑制に効果のある非線形項を明らかにする。ナノ粒子量揺らぎの各非線形結合成分について、バイコヒーレンス解析、バイフェイズ解析などのスペクトル解析法を用いてエネルギー輸送過程を同定してラジカルとナノ粒子の非線形カップリングによる成長の基盤となっている非線形結合過程を明らかにする。またラジカル密度、電子密度、電子温度、ポテンシャルなどのプラズマパラメータ揺らぎとナノ粒子量揺らぎについてのクロスコヒーレンス解析からプラズマとナノ粒子の相互作用における主要な過程を明らかにするとともに相互作用によるマクロスコピックな構造形成機構を明らかにする。 (2)ナノ粒子射出法の確立について、平成27年度は、コアシェルナノ粒子作製のためのインフライト表面修飾とナノ粒子射出の基礎実験を行う。コアシェルナノ粒子作製のためのインプライド表面修飾では、第2プラズマからのラジカル照射条件とシェル構造の相関を明らかにする。プラズマから基盤への輸送は、装置内部から外部へのガス流、輸送制御電極と接地電極間の直流電場もしくは、振幅変調放電による電場摂動、レーザー照射による光圧を用いる。ナノ粒子の射出では、ナノ粒子の透過量を明らかにすることが重要である。そのため、ナノ粒子の輸送をレーザー散乱光法を用いて計測し、ナノ粒子の透過量と輸送条件との間の相関を明らかにする。
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