本研究で開発を予定しているマルチビーム型IH-RFQ線形加速器の原理実証システムは,直接入射型の4ビーム型レーザーイオン源,4ビーム型IH-RFQ加速空洞,ビーム収束系,ビーム分析・測定部,高周波増幅器および真空ポンプから構成される。直接入射型レーザーイオン源は加速空洞と直結されており,原理的にビーム損失が少ないため高強度ビーム加速に適している。 本研究においてマルチビーム加速をおこなう重イオンとしては,研究実績のある炭素イオンを考え,1ビームあたり50mA程度のピーク電流量を予定している。レーザーイオン源から取り出された複数の炭素イオンパルスビームは,加速空洞において30~50keV/amu程度まで加速され,ビーム測定部においてビーム電流量や加速エネルギーが測定される。過去の2ビーム加速の実績が4ビーム加速でも再現されると,全ビーム電流は200mAを超える性能が得られる。 平成28年度は,前年度に実施した詳細設計(運転周波数47.8MHz,入射エネルギー3.6keV/u,出射エネルギー41.6keV/u,入射ピーク電流240mA(1ビームあたり60mA),出射ピーク電流160.4mA(1ビームあたり40.1mA))に基づき,世界初の4ビーム型IH-RFQ加速空洞の原理実証機を完成させた。加速電極には無酸素銅を用いており,加速空洞については切削加工されたアルミニウムに銅メッキを施している。ネットワークアナライザによる低電力試験の結果,その共振周波数は運転周波数どおりの47.8MHzであることが確認された。また,既存の高周波電源(最大出力100kW)の出力試験をおこない,ビーム加速実証試験に向けた準備を整えた。4ビームレーザーイオン源についてもビーム引き出し試験をおこない,現在は原理実証機全体のビームコミッショニングを進めている。
|