研究課題/領域番号 |
26246044
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
山本 樹 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (20191405)
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研究分担者 |
足立 純一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 研究機関講師 (10322629)
早乙女 光一 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 加速器部門, 主幹研究員 (20416382)
田中 隆次 国立研究開発法人理化学研究所, 放射光科学総合研究センター, 主任研究員 (30321780)
大熊 春夫 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 加速器部門, 特別嘱託 (60194106)
足立 伸一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 教授 (60260220)
帯名 崇 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 准教授 (60290855)
本田 融 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 教授 (90181552)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 放射光 / 挿入光源 / アンジュレータ |
研究実績の概要 |
アンジュレータは光源加速器において周回中の電子に周期磁場を印加することで周期運動を行わせ,干渉効果によって放射の単色度と輝度および空間指向性を著しく高める装置である。比較的低エネルギーの加速器でも、高いエネルギーの放射光(基本波で10keV以上)を生成するために、極短周期アンジュレータの開発を行った。このために我々は多極着磁法を応用して、パルス電磁石によって発生させた極短周期磁場を希土類元素永久磁石材料(NdFeB系)に直接“転写”する方法を開発した。目標周期長を4mmとし、長さ100mm×厚さ2mm×幅20mmの板状磁石素材の効率的着磁方式を確立した(平成24-25年度挑戦的萌芽研究:JSPS科研費24651107)。着磁した2枚の板状磁石を互いに対向させて、その隙間(磁石ギャップ)の中心軸上に極短周期アンジュレータ磁場を生成することができる。 平成28年度は、磁気回路着磁法をさらに発展させた。このために磁場強度/精度の向上・磁場周期精度の向上を更に追求した。磁石長長尺化のための磁石板連結方式をほぼ確立することができた。より広い磁石ギャップを実現できる点で光源加速器における性能試験の際に有用になる周期長6mmについては、新しい専用着磁器を製作し着磁方法の最適化を行っている。 昨年度、極短周期アンジュレータのための高精度ギャップ駆動機構を開発し完成できたことは本研究の大きな成果の一つである。今年度はこの成果を応用して、これまでのSPring-8およびKEK-cERLに加えて、あいちシンクロトロン光センターにおける極短周期アンジュレータの光源性能評価試験実施の条件をより深く調査し、詳細な検討と試験実施の準備を行った。更に、狭小ギャップの極短周期アンジュレータに適合する蓄積リングの設計・検討を開始した。 上記に関する成果をまとめて学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
比較的低いエネルギーの加速器においても、高いエネルギーの放射光(基本波で10keV以上)を生成することを目的として,極短周期アンジュレータの開発を行っている。このために、我々は多極着磁法を応用した方法の開発を行ってきた。この方法では、パルス電磁石によって発生させた極短周期磁場を板状の希土類元素永久磁石材料(NdFeB系)に直接“転写”する。着磁した2枚の板状磁石を互いに対向させて、その隙間(磁石ギャップ)の中心軸上に極短周期アンジュレータ磁場を生成することができる。 平成28年度は、(1) 着磁法の改善による着磁強度・精度と磁石性能の更なる向上、(2) 昨年度製作した極短周期アンジュレータ駆動架台の立ち上げ・実用化、(3)この駆動架台に基づく光源性能試験実現性の検討、の3項目を主な目標として研究を行った。項目(1)では、これまでの着磁器の改良にあわせて磁石板を連結して着磁する方法を確立することで、磁石板連結部の磁場性能を著しく向上させることができた。この成果によって、アンジュレータ磁場の500mmを超える長尺化に見通しをつけることができた。周期長については、これまでの4mmに加え、周期長6mmの着磁法を改良して、新しい専用着磁器を製作し着磁方法の最適化を行った。項目(2)では、光源性能評価試験のための極短周期アンジュレータ駆動架台の立ち上げ・実用化を行うことができた。また、項目(3)では、この駆動架台の応用を前提としてこれまでのSPring-8およびKEK-cERLに加えて、あいちシンクロトロン光センターにおける極短周期アンジュレータの光源性能評価試験実施の条件をより深く調査し、詳細な検討と試験実施の準備を行った。 上述の成果により,本研究は現在までおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
我々は多極着磁法を応用した極短周期磁場生成法の開発を行っている。この方法では、パルス電磁石によって発生させた極短周期のアンジュレータ磁場を板状の希土類元素永久磁石材料(NdFeB系)に直接“転写”する。これまで、目標周期長を4mmとし、長さ100mm×厚さ2mm×幅20mmの板状の磁石素材を効率的に着磁する方式を開発した(平成24-25年度の挑戦的萌芽研究:JSPS科研費24651107)。着磁した2枚の板状磁石を互いに対向させて、その隙間(磁石ギャップ)の中心軸上に極短周期アンジュレータ磁場を生成することができる。 平成29年度は、上述の研究目的を達成するために28年度に引き続き、極短周期アンジュレータ磁気回路着磁法をさらに発展させる。アンジュレータ磁石の長尺化のために、板状磁石の連結法を確立する。周期長4mmの着磁法に加え、より広い磁石ギャップを実現できる点で光源加速器における性能試験の際に有用になる周期長6mmについても着磁法の確立と改善を図る。 平成27年度に開発した、極短周期アンジュレータのための高精度ギャップ駆動機構を応用して、既存の光源加速器における極短周期アンジュレータの光源性能評価試験を行うための準備を行う。平成28年度までは、SPring-8、KEK-cERLおよび、あいちシンクロトロン光センターにおける性能評価試験実施可能性の検討を行った。29年度は上記検討を深化させ、詳細な検討と試験準備を行い性能評価試験の実施を目指す。更に、東北大学電子光理学研究センターのS-band 線形加速器の利用についても詳細な検討を行い、可能であれば光源性能評価試験に結びつける。また、狭小ギャップの極短周期アンジュレータに適合する蓄積リングの設計・検討を更に進める。 極短周期アンジュレータ開発に加えて、上記性能評価の検討と実施に関する成果をまとめて学会発表を行う。
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