研究課題/領域番号 |
26247002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
斎藤 毅 東京大学, 大学院数理科学研究科, 教授 (70201506)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 特性サイクル / l進層 / 指数公式 / 特性類 |
研究実績の概要 |
l進層の特性サイクルの研究に大きな進展があった。Beilinson氏が、正標数の体上スムーズな多様体上の一般の層について、その特異台の存在と、特異台のすべての既約成分の次元が多様体の次元と一致することを証明した。このことがわかれば、一般の層の特性サイクルの存在が示せることがわかっていたので、特性サイクルに関する論文を発表した。適切に横断的な射によるひきもどしに関する関手性とオイラー・ポワンカレ標数に関する指数公式などの基本的な性質も論文中で証明した。また、Beilinson氏に、特性サイクルの係数の整数性の証明を教わったので、これも論文に収めた。このほか、余接束の射影完備化内での特性サイクルの閉包のサイクル類として特性類が定義できることも論文に書いた。 このほか、積多様体での、各成分上の層のひきもどしのテンソル積の特性サイクルが、各成分の特性サイクルの積と一致することも証明し、論文として発表した。これはIllusie氏によるThom-Sebastiani公式の応用であり、特別な場合としてスムーズな射によるひきもどしと特性サイクルの整合性を含む。この性質は、指数公式の証明の中でも使われる。また、特性サイクルと固有射による順像との整合性に関する予想も定式化し、曲面から曲線への射については証明した。 アメリカ・ユタ大学で行われた代数幾何の研究集会に参加し、上記の特性サイクルの理論について講演した。このほか科研費によるものではなかったが、フランスで主催した数論幾何の研究集会等でも講演した。代数幾何に造詣の深いCatanese教授を招へいし、主催する高木レクチャーで小平ファイブレーションに関する講演をしてもらった。玉原で有限体上の多様体のl進層の有限性をテーマとする数論幾何の研究集会を主催した。数論幾何が専門のポスドクを1名雇用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
特性サイクルを多様体の次元や層に関する条件なしに一般に定義し、その基本的な性質を証明できたことは非常に大きな成果である。
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今後の研究の推進方策 |
特性サイクルが一般に定義できたので、その固有順像との整合性などの性質を調べていきたい。より整数論的な問題である、混標数の場合にも研究を進めたい。
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