研究課題
本研究では国立天文台野辺山45m電波望遠鏡に高感度電波カメラを搭載し、13"の角分解能で5'の広域を同時に観測できる高感度掃天観測システムを構築し、遠方銀河の観測を行うものである。電波カメラは具体的には90GHz帯と150GHz帯の2周波数をそれぞれ直交2偏波同時に天空上の37点を同時に観測できるシステムとする。平成27年度は電波カメラ全体の機械設計と熱設計および観測制御システムと解析システムの開発を行った。検出器は超伝導体を使用するため150mK以下という極低温に冷却する必要があり、クライオスタット(真空容器)に格納され、40K、4K、1K、0.15Kと順を追って冷却し且つ電波をクライオスタットの入力部から検出器まで導く光学系の設計を行った。特に広視野化のため電波が入射してくるクライオスタットの開口部が195mmもあることなどから、外部から大量に入射してくる赤外線輻射を遮断しつつ観測帯域を十分に透過するフィルター群を開発するなどして、最終的に67mKまでに冷却することに成功した。電波カメラ全体としては直径500mm、長さ1414mmであり、全体構成は完成した。また電波カメラの性能を評価する測定計測システムの構築も行った。ただし、検出器そのものは新しい形式のものを試みたため、年度内には完成しなかった。平成28年度に完成させ、製作したクライオスタット内に組み込んで電波カメラとして完成させる予定である。電波カメラを設置する野辺山45m電波望遠鏡内の設置場所の設計を行った。また観測時に45m電波望遠鏡と同期させて電波カメラを動作させ観測データを読み出す観測制御システム(計算機+ソフトウェア)を設計した。また読み出した観測データを解析するシステムの設計も行った。これをもとに平成28年度に観測制御システムと解析システムを製作する予定である。
2: おおむね順調に進展している
(予定どおりに進捗した点)○超伝導検出器を格納し冷却するとともに入射した電波を検出器まで導くクライオスタット(真空容器)内部の構造は完成させ、検出器を150mK以下に冷却することに成功した。これによって検出器を除く電波カメラシステムの全体部を完成させることができた。○電波カメラを望遠鏡の動きに合わせて動作させる観測制御システムおよび観測データの解析システムは予定どおり設計することができた。(予定どおりに進捗しなかった点)○新方式の検出器の製作が年度内に完成しなかった。○そのため検出器を搭載した電波カメラを野辺山45m電波望遠鏡に設置できなかった。
○超伝導共振器(MKID)を用いた検出器を完成させ、開発したクライオスタット(真空容器)に搭載して実験室で性能評価ののち、電波カメラとして完成させる。○野辺山45m電波望遠鏡に設置し、性能評価を行う。○設計した観測制御システムと観測データ解析システムを作成し、電波カメラに接続して45m電波望遠鏡と連動した観測を行い、観測データを取得して目的に沿った解析を行えるようにする。○45m電波望遠鏡+電波カメラのシステムの性能評価を行う。○実際の天体を用いて試験観測を行うとともに、観測のパラメータを決定する。○可能であれば電波強度の強い天体の観測を開始する。
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