研究課題
大気チェレンコフ望遠鏡H.E.S.S.による地上からの超高エネルギーガンマ線観測と、フェルミ衛星による全天GeVガンマ線サーベイ観測により、高エネルギー粒子加速メカニズムの解明を進めている。また、粒子加速現象を包括的に理解することを目指して、X線衛星による天体観測をガンマ線観測と組み合わせ、多波長観測を推進している。大マゼラン銀河にあるパルサーおよびパルサー星雲のフェルミ衛星による観測データを解析し、国際的な共同研究を進めた。ガンマ線観測において銀河系外のパルサーの初検出となった成果はサイエンス誌に掲載された(Ackermann et al. 2016, Science 350, 801)。一方、銀河系外のパルサー星雲からのGeVガンマ線の初検出となった例では、本研究グループが主導して研究を進め、米国で開催されたフェルミコラボレーション会議において報告した(Hagiwara, Saito, Khangulyan, and Uchiyama 2016, SLAC国立加速器研究所)。パルサー星雲において磁気再結合により非常に高いエネルギーの電子が加速されることを示す結果として注目を集めた。また我々はこのパルサー星雲を H.E.S.S. 望遠鏡で観測する計画を立案し、H.E.S.S.コラボレーションの観測計画策定委員会に提出した。ガンマ線放射が卓越している2つの超新星残骸(RXJ1713.7-3946, Vela Jr)における粒子加速の研究を進め、宇宙科学シンポジウム SNSNR2015 において、これらの超新星残骸の進化状態について発表した(Tsuji and Uchiyama, 2015, SNSNR2015, 宇宙科学研究所) 。超新星残骸RXJ1713.7-3946のH.E.S.S.望遠鏡による長時間観測とX線観測を組み合わせる共同研究を進めた。
3: やや遅れている
H.E.S.S. コラボレーションにおける国際共同研究は、多国にわたる参加研究機関で望遠鏡の運用方針を議論する必要があるが、当初の想定よりも議論が遅れ、その結果としてH.E.S.S.望遠鏡による研究はやや遅れている。一方、フェルミ衛星による観測的研究は、本研究課題で設定していた目標よりも良い成果が出ている。総合的に「やや遅れている」と自己評価している。
銀河系外のパルサー星雲からのGeVガンマ線の初検出となった観測結果を、パルサー星雲における磁気再結合による高エネルギー電子加速の理論と照合し、平成28年度中に論文としてまとめる予定である。ガンマ線放射が卓越している超新星残骸 Vela Jrにおける粒子加速の研究を進めるため、フェルミ衛星による観測データの解析を本研究グループを中心にして進める。その結果をH.E.S.S.コラボレーションによる国際共同研究として進めているTeVガンマ線のデータ解析の結果と組み合わせることで、ガンマ線の放射メカニズムについて詳細に検討する。超新星残骸RXJ1713.7-3946のH.E.S.S.望遠鏡による長時間観測とX線観測を組み合わせる共同研究を進め、平成28年度中に論文を投稿する予定である。また、超新星残骸RXJ1713.7-3946のチャンドラ衛星によるX線観測の結果と超新星残骸進化モデルを用いて詳細に検討し、この超新星残骸の進化状態について報告する論文を平成28年度中に投稿する予定である。NuSTAR衛星搭載の硬X線イメージャによる超新星残骸RXJ1713.7-3946の観測データを解析し、広帯域シンクロトロン放射スペクトルを空間分解して測定する。また、将来的にH.E.S.S.望遠鏡光検出器を改良することを目指した基礎研究として、高い量子効率を持つスーパーバイアルカリ光電子増倍菅の特性評価を進める。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
The Astrophysical Journal
巻: 819 ページ: 98
10.3847/0004-637X/819/2/98
巻: 819 ページ: 44
10.3847/0004-637X/819/1/44
Science
巻: 350 ページ: 801-805
10.1126/science.aac7400
巻: 814 ページ: 29
10.1088/0004-637X/814/1/29
巻: 801 ページ: 92
10.1088/0004-637X/801/2/92
http://www2.rikkyo.ac.jp/web/y_uchiyama/