研究課題/領域番号 |
26247029
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
中屋 秀彦 国立天文台, 先端技術センター, 助教 (70450179)
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研究分担者 |
柏川 伸成 国立天文台, TMT推進室, 准教授 (00290883)
小宮山 裕 国立天文台, ハワイ観測所, 助教 (20370108)
内田 智久 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 准教授 (40435615)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 近赤外線検出器 |
研究実績の概要 |
工業用に普及し比較的安価と期待されるインジウムガリウムヒ素(InGaAs)検出器を超広視野天文観測に用いることを目指し、国産市販素子を元に低ノイズ化と大面積化を行っている。今年度、低ノイズ化の試作を行い期待通りの結果を得ることができた。低ノイズ試作素子の測定結果を反映させて、大面積化素子のCMOS回路を試作した。 昨年度に設計を行った市販素子を元にした低ノイズ化の試作を行い、メーカーでは行わない低温での読み出し試験を行った。その結果、課題であった読み出しノイズと暗電流について予想した性能であることを確認した。ノイズについては、今回の試作では僅かに要求値に達していないが、小画素化により要求値を満たすと期待される。暗電流については、回路の一部が微小に発光していることにより、悪化していることがわかった。発光を抑える読み出し方法により、暗電流の目標値を達成することを確認した。発光の原因は解明できていないが、直接撮像による発光箇所の特定と電圧設定値による発光強度の測定を行い、回路シミュレーションに仮定を交えて対策を検討した。これらの測定・検討結果を反映させて大面積CMOS読み出し回路を設計し試作した。 オーバーサンプリングにより低ノイズ化が期待できるエレクトロニクスシステムを設計・試作した。超広視野カメラではデータ量が膨大であることから、高精度アナログ-デジタル変換器(ADC)の出力をこれまでより高速にデータ転送するだけでなく、オーバーサンプリング演算をリアルタイム処理する回路構成とした。そのため、フロントエンド回路基板に小面積フィールドプログラマブルアレイ(FPGA)を搭載しオーバーサンプリング演算によりデータ量を削減したうえで、複数ADCのデータをマルチプレクスしてバックエンド回路に高速シリアルデータ転送する方式とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
年度当初の計画通り、低ノイズ化素子の試作と大面積素子のCMOS回路製造を行った。低ノイズ化素子の冷却読み出し試験を行った結果、ほぼ予想通りの読み出しノイズと暗電流であることを確認した。回路の一部が微小に発光することで暗電流を悪化させていることがわかり、対策を検討した。これらの結果を反映させて、大面積素子のCMOS読み出し回路部を設計し、試作まで行うことができた。周辺エレクトロニクスについても、オーバーサンプリング対応回路の設計を行い試作を行った。したがって、おおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度試作した低ノイズ小面積素子の冷却読み出し試験を継続するとともに、大面積CMOS素子の冷却読み出し試験を行い、小面積CMOS素子の結果と比較する。小面積素子で問題となった発光現象について直接撮像による調査を行う。大面積CMOS素子にInGaAsフォトダイオードアレイを貼り合わせ、大面積低ノイズInGaAs検出器の試作を行い、冷却読み出し試験を行う。InGaAsフォトダイオードアレイの張り合わせはメーカーが行うが、これまでの最大面積市販品よりもさらに大面積かつ小画素であるため、どの程度の完成度や歩留まりになるか未知数である。 今年度試作したオーバーサンプリング対応エレクトロニクスシステムの試験を行う。単体試験の後、検出器評価システムに適応して、これまでの読み出しシステムと測定結果を比較する。大面積低ノイズInGaAs素子とオーバーサンプリング対応読み出しシステムによる読み出し性能が、超広視野カメラで期待される読み出し性能となる。 これらの結果を適宜反映させながら、近赤外線超広視野カメラの検討をすすめる。モザイク対応検出器キャリア、サーマルカットフィルター、冷却システム、読み出しエレクトロニクス、サイエンスや観測手法の検討を行う。
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