研究課題
平成28年度に、8 keVの平行X線に対するミラーの集光コアサイズがFWMHで0.1秒角、HPDでも0.2秒角以下という、天文観測用途に向けたX線ミラーとして世界最高レベルの性能を持つWolter表面を創成することに成功した。一方、ここで創成した高精度Wolter表面は、研磨・計測機器にほぼ正対する水平な領域であり、比較的小さなサイズ(回転放物面部・回転双曲面部とも、光軸方向32.5mm × 円環方向10mm)にとどまる。これは明るい太陽フレアの観測には十分であるが、太陽コロナのより暗い対象まで観測するにはミラー面積の拡大が必要となる。急峻な斜面をなすミラー円環方向への面積拡大を目指し、平成29年度は、研磨・計測に困難が予想された傾斜角約10度の円環側面に対して、これまでに獲得した研磨・計測手法を適用したWolter表面の試作研磨を行なった(領域の大きさは、放物面・双曲面とも32.5mm × 6mm)。10 keV程度までX線反射率を確保するため、試作ミラーに対し従来の白金蒸着に替えてイリジウムのスパッタリング成膜を施し、SPring-8にてX線評価計測(8 keV)を実施した。この急峻領域の結像性能は、集光コアサイズがFWHMで0.2秒角と水平領域に比べてやや劣るものの、HPDサイズは0.2秒角とほぼ同等の性能を示した。また、急峻領域からの結像では若干の非点収差が見られたが(面外集光で約1%の焦点距離ずれ)、結像性能に大きな支障はない。このことにより、傾斜角±10度までの円環面を精密研磨する技術的な目処が立ち、スペース太陽X線観測のための精密大型Wolterミラー実現に向けた技術的基盤を獲得することに成功した。
平成29年度が最終年度であるため、記入しない。
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第18回宇宙科学シンポジウム 講演集
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Proceedings of SPIE
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10.1117/12.2273507