研究課題/領域番号 |
26247034
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
横山 将志 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (90362441)
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研究分担者 |
南野 彰宏 京都大学, 理学研究科, 助教 (70511674)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ニュートリノ / ニュートリノ振動 / 素粒子 / 反応断面積 / 光検出器 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,T2K長基線ニュートリノ振動実験でのニュートリノ振動測定の系統誤差を削減するために,荷電カレント反応の包括的断面積測定に特化した新しい検出器を開発し,原子核の違いによる反応断面積の差を約3%の精度で測定することである。そのために,これまで (1)モンテカルロシミュレーションによる検出器設計の最適化,(2)新しいプラスチックシンチレータの開発,(3)光検出器MPPCの試験システムの構築,(4)信号読み出しシステムの開発,を中心的に行ってきた。 現在までに,それぞれの開発項目について,以下のような成果が得られている。 (1)検出器の最適化を終え,工学的設計図を作成した。(2)米国フェルミ国立加速器研究所と協力し,3mm厚の新たなプラスチックシンチレータを開発した。(3)MPPCの試験システムを構築し,部分的に試験を行った。(4)フランス・エコールポリテクニク大学のグループと共同で,信号読み出しシステムの開発を進めている。 さらに,実寸大プロトタイプ検出器として,標的部の一部分の製作を進めている。今後,このプロトタイプをニュートリノビームラインに設置し,ニュートリノビームを照射して予備的なデータを取得するとともに,得られた知見を最終的な検出器の設計に反映させるとともに,ニュートリノ反応断面積の測定に生かす。さらに,フルスペックの検出器を製作して,ニュートリノ反応の測定を行うことで系統的不定性を削減し,T2K実験でのニュートリノ振動測定の精度を向上させることを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型ニュートリノ検出器に用いるプラスチックシンチレータに関して,T2K実験で使用しているシンチレータを開発・製作した米国フェルミ国立加速器研究所の協力を得て,プラスチックシンチレータの開発を行った。特に,今回必要となる3mm厚の薄型シンチレータは,これまで製作実績のある1cm厚のシンチレータに比べ安定した製作が難しく,試作の段階で成型用の型の再製作が必要であることが判明したため,計画に若干の遅れが生じたが,最終的に生産に成功し,ビーム試験で要求性能が出ていることを確認した。 その他の,検出器設計の最適化,光検出器の試験,読み出し回路の開発,については並行して進めることで計画全体としては大きく遅れることなく,プロトタイプ検出器の製作を開始することができ,おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
まず,現在製作を進めているプロトタイプ検出器をビームラインに設置し,今後予備的なデータを取得するとともに,得られた知見を最終的な検出器の設計に反映させる。 並行して,残りの開発要素に関する研究を進める。具体的には,(1)MPPC試験システムを改良し,全数の試験を終了させる。(2)信号読み出しシステムの開発を進め,最終的な検出器で必要となる数千チャンネルの読み出しを行うための回路を製作・試験する。 製作した検出器にニュートリノビームを照射してデータを取得し,ニュートリノ反応の測定を行う。
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