研究課題/領域番号 |
26247034
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
横山 将志 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 准教授 (90362441)
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研究分担者 |
南野 彰宏 京都大学, 理学研究科, 助教 (70511674)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ニュートリノ / 反応断面積 / 素粒子実験 / 粒子測定器 |
研究実績の概要 |
本研究では,T2K長基線ニュートリノ振動実験におけるニュートリノ-原子核反応断面積の不定性による系統誤差を削減するために,ニュートリノ反応の測定を行っている既存の前置検出器の拡張として荷電カレント反応の包括的断面積測定に特化した新しい検出器を導入し,原子核の違いによる反応断面積の差を高精度で測定することを目標としている。 本年度は,検出器標的部のフルスケールプロトタイプを実験ホールに設置し,水標的でのニュートリノ-原子核反応の断面積測定を始めた。ニュートリノビームでのデータ収集を進め,ほぼ100%の効率で安定な運転を実現した結果,すでに当初予定のデータ量を収集することができた。同時に検出器の性能評価も進み,目標とする数%の精度での荷電カレント反応の包括的断面積の測定が可能な見込みを得ている。また,プロトタイプの製作・運転で得た知見をもとに,二つめのモジュール製作を進めた。プロトタイプでは組み立て時に波長変換ファイバーに力がかかり損傷する事象が見られたため,これを避けるよう手順を見直した。プロトタイプでは既存のデータ収集システムを利用したが,新たなモジュールでは信号読み出し電子回路を新たに開発している。前年度の試作回路で明らかになった不備を修正した最終プロトタイプ回路の試験を行い,必要な性能が得られることを確認した。実機用の回路の生産を進め,必要数の生産を終了した。全ての回路を接続して動作させるシステム試験を進めた結果,フロントエンド回路をある程度以上の数つなぐと不具合が発生することがわかったが,原因の究明と回路の一部修正による対応を行なった結果,全回路を正しく動作させることに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロトタイプ検出器でのデータ収集や解析には予想以上の進展があり,ニュートリノ反応断面積の予備測定の結果はすぐに得られる見込みである。2つ目のモジュールの建設は予定通り進んでいる。信号読み出し回路の開発では,実機用の回路の生産を完了できた。全数をつないで動作させた際に予想しなかった問題が発生したが,原因は判明し対処も終わっている。検出器本体の建設は回路開発と並行して進んでおり,全体スケジュールに大きな遅れはなく,おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
オンアクシスに置いたプロトタイプ検出器でのニュートリノ反応断面積測定を完了させ,2つ目のモジュールをオフアクシス位置に設置して測定を行う。複数の測定器による測定を組み合わせてニュートリノ反応断面積に対し最大限の情報を得られる解析方法の開発を行い,T2K実験の系統誤差削減に向けた研究を進める。
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