研究課題/領域番号 |
26247037
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
伊藤 好孝 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (50272521)
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研究分担者 |
さこ 隆志 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 講師 (90324368)
毛受 弘彰 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任助教 (10447849)
増田 公明 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (40173744)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 宇宙線 / 加速器実験 / 国際協力 / 実験核物理 / 素粒子実験 / 国際研究者交流 / ラージハドロンコライダー / CERN |
研究実績の概要 |
本年度ではRHIC510GeV偏極陽子陽子衝突での超前方生成粒子測定RHICf実験のデータ取得準備を進めデータ取得を成功裏に完了した。H28年6月、ブルックヘブン研究所において、RHIC加速器においてSTAR実験衝突点超前方18mの位置にLHCf-Arm1検出器を設置し、動径方向横偏極ビームを用いた低輝度衝突を行なって、ファイマンスケーリング則検証と超前方生成中性子非対称度の測定を行う実験計画の提案を行い、2017年中の測定が最終的に認められた。実験現場への設置作業、RHIC加速器とSTAR共同データ取得を行うためのトリガー改造など実験準備を進めた。最終的にRHIC加速器運転スケジュールの都合から、実際のデータ取得はH29年6月にずれ込んだもののほぼ予定位通りのデータ取得に成功した。データの初期解析を行い、中性π中間子不変質量ピークを確認している。 また、H28年11月には、LHCにおいて核子あたり8TeV陽子ー鉛衝突運転での超前方粒子生成データ収集を行なった。 LHCf13TeV陽子陽子衝突の解析ににおいては、超前方ガンマ線エネルギースペクトルの導出を行なった。また、ATLASとの連動解析に着手し、ATLAS検出器の飛跡検出器をもちいた弁別手法により回折散乱と非回折散乱を効率よく弁別する手法を構築し、超前方ガンマ線エネルギースペクトルのそれぞれの寄与が超高エネルギー宇宙線の反応モデルにより大きな違いが見られることを明らかにした。 これらの成果の発信と関連研究者との研究交流のため、Ultra High Energy Cosmic Ray Conference 2016(京都)を開催し、国内外の研究者を招聘して活発な議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
度々の加速器運転スケジュールの変更はあったものの最大のマイルストーンであったRHICf実験データ取得を成功裏に完了したことは非常に大きい。特に、実現が不安視されていた動径方向横偏極陽子ビームの衝突をほぼ予定通り実施でき、質の良いデータが取得できた。偏極衝突からの超前方粒子生成データ、及びその左右非対称度は初めてのデータであり、スピン物理の開拓はもとより、超高エネルギー宇宙線反応メカニズムをスピンをパラメータにして解き明かす糸口になるかもしれない。またLHCにおいても、当初予定をしていなかった、核子あたり8TeV陽子ー鉛衝突データの取得が実現できたことも大きい。取得済みの核子あたり5TeV陽子ー鉛衝突データとの比較により、超前方衝突における原子核効果の衝突エネルギー依存性を知ることができる。取得済みLHCf13TeV陽子陽子衝突データの解析も順調に進み、超前方ガンマ線エネルギースペクトルの導出にも成功した他、ATLASとの連動解析により、回折的散乱と非回折的散乱を効率よく弁別して測定できることも明らかにできた。これらについて、論文出版のペースは必ずしも早くないが、将来の大きな発展につながる要素について着実に成果の積み上げに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
LHCf実験、RHICf実験のデータ取得は完了しLHCf13TeV、RHICf510GeVのデータ解析に目処をつけ論文の出版を急ぐ。これらの結果を取得済みの900GeV、2.36TeV、7TeV衝突データと比較し、超前方粒子生成におけるファイマンスケーリング則を検証する。もうひとつの柱はATLAS検出器との連動解析による回折的/非回折的散乱を弁別した超前方粒子生成スペクトルの解明である。両者を弁別して宇宙線反応モデルと比較することにより、理論的な理解の難しい非回折的散乱からの粒子生成機構を明らかにする。さらに成果の展開を念頭に、空気シャワー観測だけではなく、ニュートリノ物理、ガンマ線天文学など他の関連宇宙線分野への展開を行なっていく。
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