本研究の目的は、欧州合同原子核研究機構 (CERN) の大型ハドロン衝突型加速器 (LHC) における ATLAS 実験で、素粒子標準模型 (SM) を超える物理 (BSM) を探索し、将来計画の準備研究を遂行して、次世代の素粒子物理学を切り拓くことである。本年度は、重心系エネルギー 13 TeV での衝突実験を継続的に遂行し、ATLAS 実験でのデータ収集において予定以上のデータ量を蓄積した。検出器の運転・維持、データ収集と並行して、データ解析も行った。また、LHC 加速器の高輝度化に向けたシリコンピクセル検出器の開発を精力的に進めた。 検出器の運転では、主要部であるシリコン半導体飛跡検出器 (SCT) の運転を主導し、最高性能・品質のデータを取得するための較正・運転・維持・管理を行なった。特に、高輝度化に向けた読み出しチップの制御手法を確立した。オフラインソフトウェアを安定動作させ、今後の維持・管理を強化した。データ解析では、高統計を用いたヒッグス粒子の研究・長寿命超対称性粒子の探索・Exotics 物理の探索を深化させた。ヒッグス粒子の研究では、ヒッグス粒子が Z 粒子対に崩壊し、各 Z 粒子がレプトン (電子・ミューオン) 対に崩壊するチャンネルを用い、質量・断面積の測定精度を向上させた。長寿命超対称性粒子の探索では、解析手法を改良して探索感度を向上させ、存在領域を大幅に棄却した。Exotics 物理の探索では、重い中性レプトンの探索を行い、背景事象の評価手法を開発して大幅に解析を発展させ、結果を提出する間際である。将来の加速器高輝度化に向けた検出器開発では、シリコンピクセル検出器の組立手法の開発を行なった。シリコンセンサー・読み出しチップをバンプ接合した状態にフレキシブル基板を接着、チップ・基板間のアルミ線ワイヤーボンディングの工程を実機レベルまで完成度を高めた。
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