研究課題
本研究は、非平衡多体量子輸送を定量的に明らかにする方法論を確立することを目的とした。具体的には以下の内容の研究を行う計画であった。半導体ナノ構造や微小接合系を主たる舞台として、特に完全計数統計の枠組みにもとづき、非平衡輸送を扱う。例えば、古典的には非自明なスピン系などにおけるゆらぎの定理の適用可能性を検証する。さらに、現有の電流ゆらぎ測定技術を発展させ、電子輸送の実時間測定の手法を確立する。完全計数統計測定によって電子伝導の確率分布が得られれば、分布の平均値(=電流)、分散(=電流ゆらぎ)、歪み度(=電流の3次のキュムラント)など、電子伝導のダイナミクスに関する全ての情報が得られる。このような研究は、微小な素子における電気伝導を精密に測定出来るようになって初めて可能になったものであり、近年大きな注目を集めている。本研究は、研究代表者が申請していた基盤研究(S)「メゾスコピック系における非平衡スピン輸送の微視的理解とその制御」の採択にともない、開始2ヶ月で廃止となった。上に述べた本研究の目的は、基盤研究(S)での研究目的に含まれており、本研究における研究代表者と分担者は、ともに、より大きな枠組みのなかで、広い立場から研究を行うこととなった。2ヶ月間の実績として、電流ゆらぎの更なる高精度測定に向けた実験技術の開発や、トンネル磁気抵抗素子、グラフェンの接合などにおける電流ゆらぎ測定がある。また、トンネル磁気抵抗素子における電流ゆらぎを用いたリーク電流の測定手法の提案や、ゆらぎの定理に基づく非平衡輸送現象に関する研究成果報告を精力的に行った(学会発表5件)。このような実績は、今後の基盤研究(S)の遂行にも資するものである。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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パリティ
巻: 29 ページ: 44-49
http://meso.phys.sci.osaka-u.ac.jp/