研究課題/領域番号 |
26247057
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
青木 秀夫 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50114351)
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研究分担者 |
黒木 和彦 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10242091)
永崎 洋 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門超伝導エレクトロニクスグループ, 研究グループ長 (20242018)
島野 亮 東京大学, 低温センター, 教授 (40262042)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超伝導材料・素子 / 強相関電子系 |
研究実績の概要 |
高温超伝導銅酸化物は未だに最高のTc をもつが、これを、鉄系超伝導などで培われた現在の視点から再攻略し、銅酸化物のTc 増強、及び、非銅系類似物質における超伝導誘起を目指すのが本課題の目的である。本年度の実績は以下の通り。第一の柱は、代表者の青木等が示したように、単一軌道系と見られることが多い銅酸化物も実は多軌道性を有しており、単一軌道性を高める、すなわち「軌道純化」すればTc 上昇が期待される。この理論的観点を詳しく調べた。具体的には、軌道純化理論を、これまでの一層系から二層系に拡張し、その普遍性を示した。さらに、銅酸化物の電子・ホール非対称性の起源を二体自己無撞着法によって調べ、非対称性を理解するためには現実的なバンド構造を考慮した3バンド模型が必要であることを示した。 実験的には、研究開始年度にあたり単結晶試料の育成、高圧合成法を用いた試料作成に着手したとともに、異方的圧力効果の予備実験を行った。第二の柱は、強い外場(レーザー光)により励起される超伝導体中のヒッグス・モードは超伝導の良いプローブになる、という観点を理論的に詳しく解明した。実験的には、s波超伝導体NbNを対象に、高強度テラヘルツ波パルス駆動下で超伝導秩序変数がどのように時間変化するかを調べた結果、入射周波数の2倍の周波数で超伝導秩序変数が振動すること、その際に強い第三高調波が超伝導体から発生していることを発見した。系統的な測定(島野グループ)と理論(青木グループ)と緊密な共同研究から、この現象が超伝導ヒッグスモードと光との非線形相互作用に起因していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
理論的には、1年目において軌道純化理論の普遍性を示すことができ、順調なスタートを切ったといえる。高温超伝導銅酸化物のもつTcの「ドーム構造」理解のために、DMFT+FLeXという新たな理論枠組みを構築しつつある。また、酸素の軌道をあらわに考えることの重要性をこの段階で認識できたことは大きい意義を持つといえる。実験的には、異方的圧力効果検証のための実験セットアップの構築を行い、銅酸化物粉末配向試料を用いて予備実験を行ったことは良い出発点とおもわれる。また、ポンププローブ実験用の単結晶試料の育成も行えた。光励起に関しては得に予想以上に順調に進展した。超伝導秩序変数が光で動的に変調されること、従来電磁波とは結合しないと考えられていたヒッグス・モードが非線形応答領域では結合することを発見し、世界的にも大きな反響をもたらした。
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今後の研究の推進方策 |
理論的には、銅酸化物においてさらなる軌道純化を進めるための具体的な手段、ならびに(単一軌道系ではあるが)複数バンドを持つ系における軌道純化を達成可能な物質の理論探索に着手する。実験的には、Ni酸化物をはじめとする銅酸化物類縁化合物を対象とした新物質合成、高いTcを有する銅酸化物超伝導体を対象とした異方的圧力効果の検証を行う。光応答については、これまでs波金属超伝導体で解明してきた光と超伝導体とのコヒーレント相互作用、特にヒッグス・モードの振る舞いを、d波ペアリングを持つ銅酸化物高温超伝導体に拡張し、光による超伝導秩序変数制御の可能性を探求する。
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