研究課題
Bose-Einstein凝縮(BEC)は巨視的量子効果であり,スピンギャップ磁性体の磁場誘起磁気秩序が磁気準粒子マグノンのBECで記述できることが分かっている。しかし,その臨海現象の普遍性の実験的検証は不十分であった。我々は磁場中でU(1)対称性が保たれるCsFeBr3の磁場誘起磁気秩序を50 mKまでの極低温比熱測定で詳細に調べた。これより低温での相転移温度と磁場の関係を決定し,臨界指数が理論の予言する3/2となることを検証した。CsFeBr3のように,磁化率の異方性が非常に大きな物質の磁場中比熱を通常の緩和法で測定すると,磁場中で発生した大きな磁気トルクによって試料ホルダーが回転し,結晶軸が磁場方向から傾いてしまう。我々は磁気的な基底状態がシングレット状態で,大きさが大きく,かつ異方性の大きいVan Vleck常磁性を持つ物質を用いることで大きな磁気トルクを打ち消す方法を開発した。BECと対極をなすマグノンの結晶化を示すスピンダイマー磁性体Ba2CoSi2O6Cl2の中性子非弾性散乱実験を行い分散のない磁気励起を複数観測した。その強度の波数依存性を詳細に測定して,励起モードの起源を特定した。これより,Ba2CoSi2O6Cl2では,ダイマー間交換相互作用のフラストレーションが完全であるためにマグノンの結晶化が起こることを実証した。また,少量の磁性欠陥が磁気励起に及ぼす効果を明らかにした。我々が初めて合成し,結晶構造を決定したスピンダイマー磁性体TlCuCl3はマグノンBEC研究の端緒となった物質である。東北大学と静岡大学のグループと共同研究を行い,TlCuCl3の磁場誘起BEC相での強誘電性を観測し,電気分極がダイマーを形成する2つのスピンの外積の期待値に比例することを見出した。そして,電気分極の大きさに量子揺らぎの効果が大きく現れることを示した。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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