研究課題/領域番号 |
26247062
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
白濱 圭也 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (70251486)
|
研究分担者 |
高橋 大輔 足利工業大学, 工学部, 准教授 (80415215)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 低温物性 / 超流動 / トポロジカル超流動 / ジョセフソン効果 / マヨラナ粒子 / ヘリウム3 |
研究実績の概要 |
本研究は、トポロジカル超流動体としてマヨラナ粒子発現などの新展開が期待される超流動ヘリウム3-B相に対して、ジョセフソン効果および準粒子トンネル分光の実験を行い、トポロジカル性を検証し新奇な状態を探索するものである。ジョセフソン接合として、微細加工により作成した100nmオーダーの細孔アレイやスラブを利用し、超高感度流量計を用いてジョセフソン効果を測定する。またトンネル分光に相当する実験として、3He準粒子を細孔中の表面アンドレエフ束縛状態に注入し、そのスベクトルを直接測定する。更に回転核断熱装置により、回転・流れ場の効果を調べる。 平成26年度は、本研究の主要装置となるダイヤフラム式超流動流観測装置と、PrNi5核断熱消磁装置の準備を進めてきた。前者は装置が完成し超流動4Heを用いて希釈冷凍機温度で動作テストを行った。いくつかの問題点を把握し、現在一部を作成し直してテストを行っている。慶應義塾大学で1mK以下の実験を行うための、PrNi5断熱消磁装置も設計製作を進めている。 また、当初の研究計画にはない新しいアイデアとして、ジョセフソン効果の観測に必要なマイクロスラブアレイを、電子線リソグラフィーとドライエッチングおよび金属アシスト化学エッチングを用いて製作を開始した。これには慶應義塾大学理工学部伊藤研究室の協力を得ている。これが成功した場合、B相のトポロジカル性検証に最も適した細孔構造が実現できる。 理化学研究所の回転希釈冷凍装置に銅核断熱消磁装置を導入する作業も、研究分担者の高橋が中心となって進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ当初の計画通りに進んでいる。ジョセフソン効果観測用超流動流装置は完成し、動作テストを進めている。また、慶應義塾大学に設置するPrNi5核断熱消磁装置も平成27年8月頃に完成し、超流動3Heの実験が可能となる。従って、平成27年度に超流動ヘリウム3を用いた実験ができる段階に来ている。また、ジョセフソン接合となるマイクロスラブアレイ板を、微細加工で自前で製作出来る可能性が出てきた。これにより多様な構造での実験が可能となり研究が大きく進展するだけでなく、B相以外にトポロジカル超流動となりうるA相薄膜構造での実験も可能になる。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画であるダイヤフラム超流動流観測装置の製作はこれまでと同様に進める。平成27年度は、申請時には不透明であった慶應義塾大学での液体ヘリウム入手状況が安定しているので、既存の希釈冷凍機にPrNi5核断熱消磁装置を搭載する作業に重点を置いて準備を進める。回転核断熱消磁装置は独立に準備を進めており問題はない。 26年度後半より新しく、電子線リソグラフィーによるSiウェハー中マイクロスラブ構造(高さ1ミクロン、幅100ミクロン程度)の作成を進めている。現在はきれいなスラブ構造作成のためのエッチング手法の検討と試用を行っている。27年度後半より、これらを組み合わせた超流動ヘリウム3のジョセフソン効果、準粒子トンネルの実験を開始する。
|