研究課題/領域番号 |
26247064
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
初貝 安弘 筑波大学, 数理物質系, 教授 (80218495)
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研究分担者 |
高橋 義朗 京都大学, 理学研究科, 教授 (40226907)
木村 昭夫 広島大学, 理学研究科, 教授 (00272534)
青木 秀夫 東京大学, 理学系研究科, 教授 (50114351)
福井 隆裕 茨城大学, 理学部, 教授 (10322009)
河原林 透 東邦大学, 理学部, 教授 (90251488)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | バルク・エッジ対応 / 冷却原子 / ARPES実験 / トポロジカルポンプ / トポロジカル絶縁体 / ワイル半金属 / ディラックコーン / ベリー接続 |
研究実績の概要 |
冷却原子系実験に関しては、(1)サウレスのトポロジカルチャージポンピング(TP)を世界で初めて実証し、特に、有限温度の効果を明らかにした。(2)さらに、内部自由度を利用したスピンポンプ(SP)に向けて、準安定励起状態の寿命測定を行うとともに、基底バンドと励起バンドをスピン自由度とみなすSPの実験を行った。(3)さらに、ランダムポテンシャルを導入するための光源の準備を行った。関して理論的にはTPにおけるエッジ状態の意味を明らかとし、チャージはバルクが運ぶがその量子化は断熱近似のもとでエッジ状態により規定されることを明らかとした。また、SPに関する基礎的な理論も構築中である。 ARPES実験に関しては、(1)キャリアを制御可能なトポロジカル絶縁体(Sb1-xBix)2Te3の非平衡ダイナミクスを調べ、絶縁性が高い試料において、フェルミレベルより上の表面ディラックコーン(DC)に励起された電子は非常に長い持続時間を示すことを示した。(2)また、トポロジカル絶縁体PbBi4Te4S3では終端面の異なる2種類のDCのスピン偏極状態を調べた。うち1つの状態は終端面に埋もれ外界から保護されていることを明らかにした。(3)さらに量子異常ホール効果を示す磁性トポロジカル絶縁体CrおよびVドープ (Sb1-xBix)2Te3について内殻吸収磁気円二色性を調べ、磁性元素だけではなくSb 5pやTe 5p電子も、強磁性発現に重要な役割をすることがわかった。関連して理論的にはエンタングルメントチャーン数という新しいトポロジカルな量子数を定義することでトポロジカル絶縁体における時間反転対称性の破れに関する研究を行い新しい相を発見した。 以上の具体的な研究推進の他に、バルク・エッジ対応をキーワードとする国際ワークショップを開催し、国際的な研究交流ならびに情報交換を行い、将来の展開の基礎を作った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
冷却原子系に関してはその制御性の高さを駆使して、トポロジカルチャージポンピングを世界で初めて実証するとともに、有限温度の効果やトポロジカル的性質を調べて、その理解を深めた。さらに発展的研究として、スピンポンプや摂動に対する耐性を詳細に調べる実験の準備を進めた。また、トポロジカル超流動に向けても、フェッシュバッハ分子の高効率生成、スピン・運動量ロッキング現象の観測などを進めた。 ARPES実験に関しては、最近、ワイル半金属CuTlSe2をはじめとするカルコパイライト系の試料作成を行い、一部実験を開始し成果が出始めている。また、初年度に広島大学において設置した大口径3軸マニピュレーターを伴った高分解能3次元スピン角度分解光電子分光装置のスピン分解能力の評価を行い、従来型のスピン検出器に比べ高い性能を有することを確認した。今後、本装置を用いてワイル半金属等におけるフェルミアークのスピンテクスチャを明らかにしていく。 理論ではバルク・エッジ対応の観点から上記の実験班の研究を理論的に検討するとともに、実験からアイデアを得て、新しいブレークスルーを目指している。トポロジカルポンピングにおけるバルク・エッジ対応の意義の解明の成功、ならびにエンタングルメントチャーン数を用いたトポロジカル絶縁体における対称性の保護とその破れの研究がその具体的成果である。 また、本年度は本科研費による国際ワークショップを開催し国内外から多数の参加者を得、有意義な研究交流を行うことができた。その成功を元に、2回目の国際ワークショップを科研最終年度に企画している。
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今後の研究の推進方策 |
1度の国際研究集会を含んで年2回の研究交流会をもとに、理論-実験の研究交流を行い、具体的な成果を得るなど、現在の研究体制ならびに研究の方針は適切なものと評価している。よって、この体制のまま研究を進める計画である。また、研究最終年度には再度国際ワークショップを開催し、より一層の研究の国際化と発展を目指す計画である。
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