研究課題/領域番号 |
26247075
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
八木 貴志 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 物質計測標準研究部門, 主任研究員 (10415755)
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研究分担者 |
太田 健二 東京工業大学, 理学院, 講師 (20727218)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 地球深部 / 熱伝導率 / 熱移動 / 地球コア / マントル |
研究実績の概要 |
本研究では、ダイヤモンドアンビルセルにより、地球中心部に相当する極限環境(圧力360 GPa、温度5000 K)を発生し、レーザ光を温度プローブとする最先端の熱伝導率測定法を組み合わせることで、地球コア内部の熱移動の解明に挑む。今年度は、以下の研究成果を得た。 (1)3000 K超を目指した超高温加熱を行うための、高出力レーザを導入し、高圧用熱伝導率測定装置の光学系へ組み入れる作業を進めている。また新たに、フェムト秒パルスレーザを用いた超高圧用の弾性波測定装置を構築した。これにより従来の熱伝導率と電気伝導率の評価に加えて、対象物質の音速や剛性率に関する評価が可能になった。(2)純鉄について、約1500 Kおよび約200 GPaまでの条件における熱伝導率測定を実施し、熱伝導率の圧力ー温度依存性を得た(論文投稿準備中)。(3)下部マントル鉱物であるフェロペリクレース層の熱伝導率と電気伝導率を常温、約120 GPaまでの範囲で測定し、Feの添加およびFeのスピン変態に伴う熱伝導率の低下を明らかにした(論文公開済み)。(4)同じくマントル層のブリッジマナイト相の熱伝導率の圧力依存性を測定した(論文投稿中)。(5)新たにFeおよびFe-Ni系合金について、フェムト秒パルス照射による超高圧音速測定にも取り組み、Ni濃度による音速低下の依存性を明らかにした(論文投稿中)。 これらの成果により、マントル最下層~地球コアにおける熱伝導の描像に大きく迫っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発した研究設備が稼働することで多くの研究結果が出始めており、研究は全体的に順調に進んでいる。一方、レーザ加熱手法についての導入を当初より後回しにしたが、内熱式加熱により1500K以上の測定を可能にしこれとレーザ加熱をハイブリッド化することで目標を達成できると見込む。なお上記を後回しにした理由は、新たに地球コア物質の音速測定装置を作製したためである。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は計画の最終年度にあたり、熱伝導率測定の温度・圧力範囲をできる限り拡張する。共同研究者が別テーマとして進めている地球コア物質の電気伝導率測定結果が今年度パブリッシュされたので、地球コア条件におけるウィーデマンフランツ則検証のためのバックデータもほぼ揃いつつある。これらの研究データを集約し、地球コアからマントルへ至る熱移動の解明に挑戦する。 一方で、次年度にはこれまでの研究において明らかにできたことと未解明な部分を整理し、次のステップに対する課題を抽出する。例えば地球コア物質はFe-Ni合金が主体と思われていたが、近年の研究では、サルファやシリコンなどの新しい元素との組み合わせも候補に挙がるようになった。このような新しい地球深部科学の知見に対応する将来的な戦略が必要と考える。
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