研究課題
海洋の表層と中深層をつなぐ子午面循環は膨大な熱・塩・物質を輸送し、地球規模の気候変動や物質循環の基盤となっている。本研究では、北海道東方の準定常ジェットを通した、黒潮水の亜寒帯循環への輸送過程に注目することで、子午面循環表層経路の解明を重点的に進めてきた。(1)準定常ジェット上に放流した漂流ブイの漂流速度と衛星海面高度計から得られる地衡流が良く一致したことを基盤に、仮想粒子を衛星高度計の地衡流で流すという、粒子追跡実験を行った。すると、黒潮から派生した高温・高塩水は、水深6000mの北太平洋移行領域において、背の低い海底地形に敏感に応答しながら亜寒帯海域へと進入する様子が明らかとなった。たとえ300m程度の海底地形であったとしても表層流は地形を感じており、これまでの常識を覆す結果となった。また、準定常ジェットの強度と西部北太平洋の海面水温との関係を調べた結果、ジェットの強化にともなって移行領域の海面水温が高くなるという相関を見出した。これは、ジェットによる熱輸送の重要さを示すものである。(2)気象研究所のデータ同化システム(MOVE)の出力に対して4次元変分法を用いたトレーサー解析を実施したところ、準定常ジェットからベーリング海に連なる亜熱帯-亜寒帯循環間の交換経路を見出した。(3)準定常ジェット上で採取したアルカリ度と塩分を用いて、これまでできなかった表層の親潮水・黒潮水・雨(天水)の混合比を、定量的に見積もることに成功した。その結果、準定常ジェットは5割弱の混合比で黒潮水を亜寒帯循環へと輸送することが分かった。また、ロシア船や白鳳丸による観測によって、準定常ジェット中層にはオホーツク海から流出した鉄がかなりの濃度で存在していることが明らかとなり、準定常ジェットが移行領域や亜寒帯循環の生物生産を支える重要な要素であることが示された。
28年度が最終年度であるため、記入しない。
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気象研究ノート
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