研究課題/領域番号 |
26247078
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
竹内 望 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30353452)
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研究分担者 |
大手 信人 京都大学, 情報学研究科, 教授 (10233199)
中野 孝教 総合地球環境学研究所, 研究高度化推進センター, 教授 (20155782)
山口 悟 独立行政法人防災科学技術研究所, 観測・予測研究領域 雪氷防災研究センター, 研究員 (70425510)
瀬川 高弘 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(新領域融合研究センター及びライフサイ, 新領域融合研究センター, 助教 (90425835)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 氷河 / 物質循環 / 微生物 / アルベド / 生態系 / グリーンランド / 天山山脈 |
研究実績の概要 |
2014年6月から8月にかけて,予定通りグリーンランド氷床北西部および中西部の調査を行った.北西部の調査では,カナック氷河表面の暗色物質が鉱物粒子と微生物からなるクリオコナイトであることが確認され,さらにその不純物濃度の空間分布から,微生物活動だけでなく氷体内部から供給される鉱物粒子が暗色化に寄与していることが示唆された.氷河上の微生物の栄養塩となる窒素の循環を明らかにするために,融解水中の溶存硝酸の安定同位体比を分析した結果,氷河上の硝酸の供給源には人為起源と自然起源の2種類があり,季節によってそれぞれの供給が変動することが示唆された.このような栄養塩供給の微生物への影響および有機物生産との関係について,今後分析を進める予定である.中国天山山脈ウルムチの氷河の調査についても,予定通り8月から9月にかけて行った.暗色化が顕著であるウルムチの氷河のサンプルを採取の結果,特に窒素の供給源および循環過程がグリーンランドとは大きく異なることが明らかになった.暗色化が顕著なアジアの氷河とそうではない極域の氷河について,このような栄養塩や鉱物粒子供給過程の比較を通して,暗色化の理解を目指す予定である.氷河表面構造に関わる研究については,雪氷防災研究所の低温実験室にて2015年3月に予定通り実験を行った.氷と不純物を用いて融解実験を行った結果,微生物による不純物の暗色化および集合体の形成が,氷上に不純物がとどまる上で重要であることがわかった.実験結果の分析から,不純物によって氷表面にできるクリオコナイトホールという円柱状の穴の形成と融解への影響の理解を今後進める予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は計画通りグリーンランド氷床の調査を行い,暗色化が顕著であると報告されている氷床北西部,および中西部での氷河表面不純物採取に成功した.採取したサンプルを用いて暗色化が微生物由来の有機物であることを確認するとともに,有機物の安定同位体比から氷床上の暗色プロセスにも地理的位置によって異なることがわかった.さらに計画通り電子顕微鏡を購入し,その分析の結果からは,暗色物質の構造,鉱物粒子の起源の重要性などが,明らかになりつつある.また,防災科学技術研究所の低温実験室でのクリオコナイトホール形成実験も予定通り2015年3月に行うことができた.以上,観測,分析,実験ともに当初の予定通り進めることができた.
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今後の研究の推進方策 |
次年度からは当初の計画とおり,従来から観測を行ってきたアラスカの氷河,および初年度に引き続き中国天山山脈の氷河の調査を行う予定である.調査では,氷河表面の雪氷および不純物のサンプルを採取し,初年度に購入した電子顕微鏡をつかって,暗色物質であるクリオコナイトの構造,および鉱物粒子の解析を行う共に,不純物中の有機,無機成分の安定同位体比分析,雪氷中の溶存窒素の安定同位体比の分析も進める予定である.
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