研究課題
2015年8月に計画通り米国アラスカのグルカナ氷河およびハーディング氷原の調査を行った.氷河表面のアルベド測定,表面不純物および雪氷のサンプリング等と予定通り行うことができた.調査の結果,グルカナ氷河は5年前の調査に比べて末端位置が約100m後退しており,どの氷河も目視で明らかなほど縮小していることがわかった.アルベド測定の結果は,5年前の調査に比べて顕著な暗色化が起きているわけではないことがわかった.引き続き,不純物成分,微生物分析等を行っていく予定である.8月下旬より9月上旬にかけて,中国天山山脈ウルムチNO.1氷河の調査を行った.この氷河でも定常観測をすべて予定通り行うことができた.採取試料の分析は,これから行っていく予定である.その他,雪氷微生物の生態研究のため,国内の立山および月山で,赤雪,緑雪現象の調査をおこなった,特に立山では連年にない大規模な赤雪現象がみられ,現在その原因を分析中である.クリオコナイトホール作成実験については,9月に雪氷防災低温実験棟で5日間行った.あらたに高温・強風速条件でのクリオコナイトホールの変化についてのデータを得ることができた.次年度も引き続き実験を行う予定である.その他,衛星画像分析からグリーンランドの暗色域の拡大を定量的に明らかにしたことや,硝酸安定同位体比からグリーンランドと天山の氷河では窒素循環が大きく異なること,シアノバクテリアのDNA分析から世界各地の氷河上のシアノバクテリアの分類,系統が明らかになったことなどの成果が得られた.
2: おおむね順調に進展している
北極圏やアジア山岳域の氷河の暗色化の実態については,この2年間で定量的に明らかになってきた.特にグリーンランド氷床の暗色域拡大速度,暗色不純物の構成物等から,シアノバクテリアによる暗色物質クリオコナイトの形成過程,クリオコナイトホールの動態との関連が明らかになってきた.また,計画通り,天山の氷河,アラスカの氷河の調査を行うことができ,サンプルを採取することができた.クリオコナイトホールに関する低温室実験,硝酸同位体比による氷河上栄養塩循環の把握,DNA分析によるシアノバクテリアの系統地理学等についても,順調に結果が出てきている,
次年度以降については,当初ヒマラヤおよび北極スバールバルにの氷河での観測を予定していたが,現地の状況および共同研究者の都合により,計画を変更し,3年目にはヒマラヤの代わりにパミール山岳域の氷河の調査を実施する予定である,低温室実験,同位体・微量元素分析,DNA分析については,採取してきたサンプルについて引き続き行っていく予定である.
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すべて 国際共同研究 (4件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 9件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 8件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (22件) (うち国際学会 9件、 招待講演 1件)
Frontiers in Earth Science
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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