研究課題
今年度は,当初の計画通り7月から8月にかけてグリーンランド北西部および南西部の調査を行った.カナック氷河上の暗色バンドの成因を明らかにするため,1mのアイスコア掘削を消耗域で行い,合計39本のコアを掘削した.コアの分析の結果,表体内に含まれる不純物は平均で2.6g/Lで,その空間分布は暗色バンドと必ずしも一致しなかった.このことは,氷河の暗色域の形成には,単に氷体内の不純物の露出だけでなく,表面の微生物による濃縮プロセスが重要であることを示している.8月下旬には計画通り中国天山山脈の氷河調査を行った.調査の結果,毎年継続的に実施している氷河不純物および生物,化学成分のデータを得ることができた.なかでも今回は,暗色物質のクリオコナイト粒の形成に関与するシアノバクテリアの群集の氷河上の空間分布を明らかにし,シアノバクテリアの種類によって分布に偏りがあり,暗色物質の形成に影響していることがわかった.雪氷藻類の生態に関しては,国内の月山や苗場山周辺で4,5月に調査を行った.これらの地域では,北極の積雪でも繁殖する緑藻類が観察され,その繁殖量やタイミングは積雪中のリン濃度と強い関連があることが明らかになった.緑藻類のDNA分析の結果,全球的に分散している種と地域内に分散が限られる種が存在することが明らかになった.昨年度までのクリオコナイトホール実験の結果を解析した結果,ホールの形成には氷の結晶構造が強く関与していることがわかった.これは氷河の暗色化には氷の物理的な要因も考慮する必要があることを示している.以上の調査分析から,氷河暗色化に関わる不純物の起源,濃縮,それに関与する微生物の繁殖過程が明らかになった.以上の成果は,3月に京都で開催された雪氷圏と生物圏の国際シンポジウム(国際雪氷学会)で発表を行った.
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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