研究課題/領域番号 |
26247082
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
町田 忍 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 教授 (70209469)
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研究分担者 |
長井 嗣信 東京工業大学, 理学院地球惑星科学系, 教授 (60260527)
門倉 昭 国立極地研究所, 研究教育系宙空圏研究グループ, 教授 (70185883)
齋藤 義文 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙プラズマグループ, 准教授 (30260011)
篠原 育 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙プラズマグループ, 准教授 (20301723)
家田 章正 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 助教 (70362209)
堀 智昭 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 准教授 (30467344)
寺田 直樹 東北大学, 理学研究科地球惑星科学専攻, 准教授 (70470060)
宮下 幸長 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 助教 (20435811)
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研究期間 (年度) |
2014-06-27 – 2017-03-31
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キーワード | サブストーム / 地球惑星磁気圏 / オーロラ / 磁気リコネクション / カタパルト電流層 / GEOTAIL衛星 / THEMIS計画 / MMS衛星 |
研究実績の概要 |
本研究では目的を達成するために、基盤的な3つの課題とそれらを総合した4つ目の課題を設けて研究を実施したが、それぞれについて以下のような業績が得られた。
① サブストーム時のオーロラの発展: 昨年度に引き続いてサブストームに伴う特徴的なオーロラ活動の研究を、昭和基地~アイスランド共役点観測などにより得られたデータを用いて行い、成果を国際学術誌に発表した。 ② カタパルト電流層、カレントディスラプション、磁気リコネクションの関係の解明とMMS衛星計画への参画: THEMIS衛星データの解析によって、カタパルト電流層で発生した地球向きの流れがバルーニング不安定の発生をトリガーしている結果を得た。また、磁気中性線の朝夕方向の空間スケールと、磁気中性線付近における電子加熱低周波プラズマ波動について重要な関係を見出した。さらに、分担者が開発した低エネルギーイオンの観測装置FPI-DISを搭載したMMS衛星が、2015年3月12日に打ち上げられ、16台のセンサー全てが予定通りの性能を発揮していることを確認した。 ③ カタパルト電流層の不安定性に関する理論解析および計算機シミュレーション: 観測の成果を検討して、数値シミュレーションのセットアップを決定する作業が大きく進んだ。また、昨年度までに開発した高次精度中心セミディスクリートスキームを、プラズモイド不安定などの実問題に適用した。さらに、磁気圏-電離圏結合の影響を評価すべく、電離圏ポテンシャルソルバーの開発を進めた。 ④ サブストーム時のオーロラ-磁気圏変動の対応関係と物理機構の解明: オーロラの極方向への拡大が階段状に起こる現象について事例解析を行った。その結果、磁気リコネクションの位置が、尾部側に階段状にジャンプしていることを見いだした。また、THEMIS計画による観測データを用いて、サブストーム開始に伴う磁気圏近尾部とオーロラアークの発展のタイミングを詳細に調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
① サブストーム時のオーロラの発展: 計画通りに、サブストームに伴う様々な特徴的なオーロラ活動の解析を進めてきており、研究成果の公表も予定通り行った。 ② カタパルト電流層、カレントディスラプション、磁気リコネクションの関係の解明とMMS衛星計画への参画: カタパルト電流層の緩和による地球向きの流れの発生と、それが誘起するカレントディスラプションと考えられるプラズマ不安定の発生を示唆する結果が得られた。また、長期にわたるGEOTAIL 衛星のデータの中から磁気リコネクションイベントを抽出して、磁気中性線の朝夕方向の空間長について統計的に有意な物理像を得ることができ、その成果を公表論文として発表した。 平成27年度の申請時の計画は、MMS衛星群の高時間分解(30msec) のプラズマ観測データを用いて、これまでの衛星の時間分解能(約3sec)では捉えられなかった現象のデータ解析を行うことであったが、それを達成できる目途が立った。まだデータ量としては少ないものの、MMS衛星で取得された磁気圏夜側で取得された低エネルギーイオン・電子データの解析を開始した。 ③ カタパルト電流層の不安定性に関する理論解析および計算機シミュレーション: 昨年度までに開発した高次精度中心セミディスクリートスキームを実問題に適用してその信頼性を確認することができた。また、オーロラと磁気圏の変化を正確に対応付けするために必要な電離圏ポテンシャルソルバーの原型を開発した。 ④ サブストーム時のオーロラ-磁気圏変動の対応関係と物理機構の解明: オーロラの極方向への拡大が階段状に起こる現象について事例解析の研究成果を論文発表した。また、サブストーム開始に伴う磁気圏近尾部とオーロラアークの発展のタイミング詳細に解析し、その結果を論文で公表した。
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今後の研究の推進方策 |
① サブストーム時のオーロラの発展: SCに伴うオーロラ活動、昼間側の脈動オーロラ、アイスランド~昭和基地地磁気共役点におけるオーロラ活動の共役性、などについて、より詳細な研究を推進する。 ② カタパルト電流層、カレントディスラプション、磁気リコネクションの関係の解明とMMS衛星計画への参画: カタパルト電流層とカレントディスラプションの関係の研究を継続し、カタパルト電流層と磁気リコネクションの関係を調べて、カタパルト電流層緩和モデルのさらなる裏付けを得る。また、磁気中性線の継続時間と、その活動が停止する際のダイナミクスについて調べる。その際、イオンと電子を高効率で加速する機構を探索する。さらに、MMS衛星による磁気圏夜側の磁力線再結合領域の本格的な観測は平成28年度後半以降となるが、これまでに取得したデータの解析を進めてそれに備える。 ③ カタパルト電流層の不安定性に関する理論解析および計算機シミュレーション: これまでに検討している設定条件の検討をもとに、表題に関する3次元電磁ハイブリッドシミュレーションを本格的に実施する。さらに、よりグローバルな構造変化の解明のために、昨年度までに開発したMHDシミュレーションにホール項と磁気圏-電離圏結合の効果を組み込んで計算を実行する。 ④ サブストーム時のオーロラ-磁気圏変動の対応関係と物理機構の解明: オーロラの観測データを格納するための記憶装置を追加購入して整備し、オーロラ爆発開始時のオーロラの形態の解明を行う。さらに、他のサブストーム事例をもとに、個々の過程の詳細について検証を行う。
本課題研究によって得た、サブロームに伴うオーロラの変動、カタパルト電流層の緩和、磁気リコネクション、カレントディスラプションに関する地上・衛星データ解析および理論シミュレーションの研究成果を総括して、報告集としてまとめる。
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