研究課題
2014年度の研究は、3次元全波動場インバージョン解析に必要なデータを取得するための探査準備と実施に集中した。準備は次の3つを軸に進められた。第1に富士川河口断層帯の浅部地下構造を詳細に解明する上で最適のターゲットとして同断層帯の東縁である大宮-入山瀬断層を現地での地質調査の上で選定した。第2に、3次元全波動場インバージョン解析が可能となる探査測線の設定のための実地踏査を大宮-入山瀬断層の地下構造が拡がると推定される星山丘陵とその周辺で行なった。その結果を踏まえて測線と探査仕様を決定した。第3に、探査実施について地元自治体ならびに住民の方々のご理解をいただく活動を精力的に行った。これらの準備をへて、探査は2015年3月12日に報道機関への説明会を行った後20日までの9日間、中型バイブレータ2台を使用して、平均受発振間隔12.5m(総受発振地点数約1500)で5測線(総延長16.4㎞)にそって実施された。この探査においては、5測線をほぼ平行に配列したうえで全点受振状態を継続するパラレルライン反射法地震探査という手法を導入した。その理由は、この手法によって共通反射点を広範囲にわたって設定することが可能となり、3次元全波動場インバージョン解析に資するデータを取得できると判断したからである。取得された各受振点のデータは2014年度内にデータ切り出しと前処理までを終了させた。
2: おおむね順調に進展している
『研究実績の概要』で述べたように2014年度の中心的課題であった3次元全波動場インバージョン解析に必要なデータを取得することであった。探査時のモニター記録によれば、探査は低ノイズレベル下で行われ、良質なデータを取得するという計画は達成されたと判断される。一方、レシーバ関数解析のための4か月の長期間自然地震観測は反射法地震探査と連動して行う当初計画であったが、探査が年度末の3月になったことから次年度にまわすことにした。
今年度は以下の2本柱で研究を推進する。1.反射法地震探査処理(1)6月くらいまでに標準的な反射法処理を行ったのち、直交する重合測線を設定して2次元断面を作成する。この断面をもとに地下構造の暫定的な解釈を行う。(2)(1)を受けて次の2つを実行する。①解釈が適切かどうかを地質学的に検証するために探査地域の詳細な地質調査を行い、解釈の問題点を抽出する。②①を受けて高度な処理法による準3次元処理へ進む方法を検討する。(3)準3次元断面を作成する。(4)2016年度に実施する3次元全波動場インバージョン解析用のデータセットを作成する。2.レシーバ関数解析のための4か月の長期間自然地震観測を2015年度後半の4か月に設定し資機材を確保するとともに、現地調査を2015年度夏までに実行して観測点候補地をリストアップする。その後、同リストにもとづき自治体ならびに地権者からの観測承認を得る作業を速やかに開始し、準備作業を進める。
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http://www.thu.ac.jp/news/2015/04/150408-01.html