研究課題
気候システムの中での氷床変動の役割について理解をすすめるため、今年度は加速器質量分析装置の放射性炭素同位体分析前処理システムの改良と、実際の南極堆積物の分析などを行った。過去の氷床変動の復元を行うために東南極の陸域の情報と、東南極海底堆積物を用いた古環境復元と年代の決定の高精度情報は、氷床融解史の復元と海洋循環への影響評価を行う上で有用だが、南極の堆積物年代決定の方法は多くの困難が伴う。主には海洋に棲息する炭酸塩の殻を持つ生物が少ないことからくる、堆積物中の有機炭素をつかった年代測定に依存することから来るものである。特にこれまで多くの研究で行われてきた、堆積物の全有機炭素を燃焼させて得られた試料による年代決定には、多くの陸源の古い炭素の希釈効果があるために、実際よりもかなり古いバイアスのかかった年代が得られてきたため、イベントのタイミングの決定が難しい問題点があった。今年度は、堆積物からの有機物抽出法の改良や微量測定のための前処理の開発を行うとともに、東南極氷床沖合で採取された堆積物に適用することを行った。その結果、比較的新鮮な有機炭素が含まれている堆積物にも古い炭素の影響が残っていることが明らかになった。また特定有機化合物の年代決定も行い、この海域の最終氷期以降の融解の開始時期が1万年ほど前からであるという結果を得た。
2: おおむね順調に進展している
加速器質量分析装置の分析法の改良と堆積物の抽出法の検討を行う中で、抽出法の改良や特定有機化合物の定量などについては、予想以上の分析が行えるようになり、東南極氷床沖合でとられた堆積物への応用は、論文化に成功する等、予想以上の成果が得られた。しかし機器の多くの故障による分析の停止などが度々おこり、期待していたほどの分析個数は得られることができなかった。両者を鑑みると、概ね順調に進行していると評価できる。
加速器質量分析装置の分析プロトコルの改良による精度向上と、前処理方法の改良を続ける。また全球的な氷床変動と気候変動との対比を行うべく、氷床から距離の離れた地域の海水準の情報を復元することで、古気候データとの比較を行い、表層システム中の寒冷圏の役割について検討を進められるようなデータの採取と分析を行う。そのためには高緯度のみならず低緯度のサンプルについても採取作業を行うことを検討する。
すべて 2015 2014 その他
すべて 雑誌論文 (26件) (うち査読あり 25件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (29件) (うち招待講演 3件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Geomorphology
巻: 229 ページ: 112-124
巻: 235 ページ: 15-26
Progress in Earth and Planetary Science
巻: 2 ページ: 1-15
Climate of the Past
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Deep Sea Research part II
Geology
巻: なし
10.1130/G35977.1
巻: 2
10.1186/s40645-015-0032-y.
Radiocarbon
International Journal of Mass Spectrometry
Journal of Cave and Karst Studies
巻: 76 ページ: 164-172
Earth and Planetary Science Letters
巻: 406 ページ: 198-212
Quaternary Science Reviews
巻: 103 ページ: 26-33
Geophysical Research Letters
巻: 41-19 ページ: 6819-6825
Quaternary International
巻: 349 ページ: 207-220
Geochemistry, Geophysics, Geosystems
巻: 15-8 ページ: 3190-3197
Journal of Quaternary Science
巻: 29-5 ページ: 455-462
Nature Communications
巻: 5 ページ: 4102
Nature Scientific Reports
巻: 4 ページ: 5261
巻: 333 ページ: 207-215
巻: 1 ページ: 1-9
Quaternary Geochronology
巻: 20 ページ: 1-7
Marine Geology
巻: 348 ページ: 27-36
Geochemical Journal
巻: 48 ページ: 145-152
Quaternary Science Review
巻: 83 ページ: 157-170
巻: 56 ページ: 1009-1017
J-DESC News
巻: 7
http://aces.aori.u-tokyo.ac.jp/yokoyama/index.html